2.ラベンダー(4)
下塗りした絵を乾燥させると、もうすぐ完成が見えてくる。まだペルカの王がやってくる日は先であるので、ディアンは少しペースを落として絵を描くことにした。
ディアンは筆を紫の絵の具につけて、キャンバスの上に運んだ。ラベンダーが一面に広がっている、この壮大な景色を絵に描けることに、ディアンはとてもワクワクしていた。アーネも得意のサンドウィッチを持ってきて、昼食にした。
「ディアン様。作品はどのようになっていますか」
「かなり完成が見えてきました。あとは自分の思うように描くだけです」
大きな仕事だからどう描けばいいか不安だったけれど、ディアンのある程度想像していた通りに進んで、彼は安心していた。
「ペルカの王に渡す絵を僕が任されるなんて、思ってもいなかったので、自分も成長したなと思いますねー」
「陛下もあれほど期待していたので、あなたを選抜する前から気にかけていたそうですよ」
「本当ですか!それは知らなかった。過去の絵を見たことがあるってことですよね!それは恥ずかしいなぁ」
それから話題はペルカの王についての話に変わった。
「ペルカの王ってどんな方なんでしょうね」
「すごく背の高い方なんです。威圧感があるというか」
「えっ、会ったことあるんですか?」
「すごく昔の頃にですね、一回だけですけど」
ディアンは筆を止めた。よくよく考えればおかしいことだと思ったのだ。
(どういうことだ?ペルカの王という滅多に会えないような隣国の王と直接対面したことがある?そんなの有力貴族でもできないようなことだ。それをただの使用人のアーネさんが?)
「えっと……アーネさんって、使用人ですよね?」
「はい」
「じゃあどうやって会うんですか?直接お呼ばれでもしない限り対面できませんよ」
「えーっとまあ……ね」
珍しくアーネが言葉を濁した。変な空気になってしまったので、ディアンは話題を変えた。
「じゃあ、使用人の仕事ってどうなんですか?」
「忙しいですよ。ディアン様のお世話だけでなくて、他に仕えている人のために買い出しとかもありますし」
「あー、じゃあ僕の専属ってわけでもないんですね」
「ディアン様に専属となるとかなり暇になってしまうのでね」
ディアンはほとんどアーネに仕事を出さないので、アーネは使用人としては仕事が少ない。
「別に、もっと仕事を出してもらっても構わないですよ」
「いや、僕は性格上そんなこと出来ないので」
色々と喋って、ディアンは作業に戻った。
♢♢♢♢
小麦畑の作品はディアンが学生時代に作った作品の中でもかなりいい出来栄えとなった。
優しい秋の風に靡いて穂が揺れていて、周りには秋の紅葉が鮮やかに映えている。ディアンは色のコントラストを利用するのが非常に上手だった。
「ディアン、これはかなり良い作品だ。これまでは人物画ばかりで、風景画を描かせなかったから、君がこんな才能を持っているなんて知らなかった」
珍しくフィルラウスはディアンを褒め称えた。これはきっと表彰式でもいい結果になるに違いないとディアンは思った。そこで、表彰式の日は少しきっちりとした服を着ていった。
「きっと、ディアンの作品は選ばれるだろうね」
「フィルラウス先生も褒めてたからね」




