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3 パーティー

 義父と母は相変わらず手を握り合ったままだったが、先ほどよりも甘い雰囲気が漂っているのは気の所為ではないだろう。


 それでも私達が部屋に戻ってきたのは気が付いたようで義父はソファーに座った私達を見て相好を崩した。


「ドロシー、アナベル。部屋は気に入ってくれたかな? 何か足りない物があればすぐにサイモンに言うんだよ」


 私と姉はチラリと視線を交わすとペコリと頭を下げた。


「ありがとうございます、お義父様」


「とても気に入りました。それにエラからプレゼントもいただきました。大切にしますね」 


 私が首にかけたネックレスを義父に見せると、義父は「うんうん」と満足そうに頷いた。


「エマが『お姉様達とお揃いのネックレスが欲しい』と言うので用意したんだよ。気に入ってくれて良かった」


 それから義父がサイモンに向かって合図を送ると、サッとサイモンは如何にも宝石が入っていると分かる箱を取り出して義父に渡した。


「それから、これは私からトレイシーに。…結婚式を挙げてあげられなくて申し訳ないけれど、その代わりにこれを君に…」


 義父が箱の蓋を開けると、中には宝石を散りばめたネックレスが入っていた。


 母が呆然としている間に更に義父は大きなダイヤモンドの付いた指輪を母の指にはめた。


「ああ、良く似合ってるよ」


「…ボブ… …ありがとう…」


 感激のあまりに泣き出した母に義父はオロオロとしていたけれど、私達の指摘を受けてそっと母を抱きしめた。


「「おめでとうございます。お義父様、お母様」」


「おめでとうございます。お父様、お義母様」


 私達三人の祝福を受けて、母も涙を拭いながらようやく笑顔を取り戻した。


「ありがとう。今夜は内輪だけのパーティーを開くつもりだからね。それまではゆっくりしておいで」


 義父はそう私達に告げると母を伴って応接室を出て行った。


 お互い好きな相手と再婚出来て嬉しいのはわかるが、あまりにも私達をおざなりにしすぎではないだろうか?


 親がいないと何も出来ないような小さな子供ではないにしてもちょっとばかり面白くない。


 姉とエラと顔を見合わせていると、サイモンが私達の視界に入って来た。


「失礼いたします。今夜のパーティーのドレスを準備しているのですが、ドロシー様とアナベル様のサイズを合わせたいのでお部屋に移動していただけますか?」


「え? ドレスですか?」 


「はい。こちらでご用意させて頂いたので色やデザインはお気に召されないかもしれませんが…」


 サイモンは申し訳なさそうな顔をするが、きっと今着ているドレスよりは格段に良い物に違いない。

 

「いえ! 大丈夫です!」


 見てもいないうちからそう返事してしまうのはどうかと思ったが、思わずテンションが上がってしまうのは仕方がないと思う。


 私と姉はメイドに連れられて、さっき見せてもらった私達の部屋へと向かった。


 姉の部屋で私も一緒に、用意されていたドレスに袖を通す。


 少しばかり大きめのサイズだったので、裾を少し上げて、ウエストはリボンで調節された。


 エラはそんな私達の様子を近くに置かれた椅子に座ってニコニコと見ている。


 ドレスの調節が終わった後はエラのお部屋にお邪魔して、本棚に置かれた本を皆で読んで過ごした。


 やがてパーティーが開かれる時間が迫り、私達は用意されたドレスに着替えてパーティーが行われる広間へと向かった。


「うわぁ~! ステキ!」


 広間には色とりどりの花が飾られ、美味しそうな料理がテーブルいっぱいに並べられていた。


 中央に置かれたテーブルに義父と母、そして私達が腰を下ろす。


(パーティーの参加者って私達だけなのかしら? それにしては料理や飲み物の量が多すぎると思うんだけれど…) 


 そう思っていると、広間の扉が開いてこの屋敷の使用人達が次々と入って来た。


 メイド服を着た者、侍従服を着た者、コック、庭番等、様々な服に身を包んだ者達が入ってくる。


 母と私と姉が驚いているのに対して、寄付とエラはただニコニコしているだけだった。


 使用人達は広間に整列すると一斉に頭を下げた。


「「旦那様、奥様。ご結婚おめでとうございます。ドロシー様、アナベル様。ようこそいらっしゃいました。どうぞよろしくお願いいたします」」


「ありがとう。こちらこそよろしく頼むよ。今日は大いに飲んで食べてくれ」 


 義父が合図をすると使用人は一斉に動き出した。


 そのまま私達の給仕に付く者や、料理を取り分ける者、飲み物を注ぐ者など様々だ。


 先に食べたり飲んだりしていた者が、時間がくると私達の給仕へと代わっている。


 いくら内輪だけのパーティーだとしても、使用人達と一緒にこんなふうに過ごすなんて伯爵家では考えられなかった。


 このように使用人達を大切にしているから、彼等も義父やエラに尽くしているのだろう。


 母や私と姉のところに入れ替わり立ち替わり使用人達が挨拶に来てくれるけれど、とても名前を覚えていられない。


(子供だから少しくらい覚えられなくても許してくれるわよね) 


 美味しい料理をお腹いっぱい食べて、私と姉は幸福に包まれたまま眠りについた。




 そして、再婚から一年後。


 母は玉のような男の子を産んだ。


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