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13 王子達の訪問

 クリストファー王子とブライアン様がいらっしゃる時間が近付いた。


 私達一家はお二人を出迎えるために玄関ホールで待機している。


 ガラガラと遠くから馬車が近付いてくる音が聞こえた。


 サイモンが玄関の扉を開けてお二人を出迎えに行く。


 しばらく待っていると扉が開いてクリストファー王子とブライアン様が屋敷の中に入って来た。


「ようこそ、クリストファー王子、ブライアン様」


 お義父様が歓迎の言葉を述べる後ろで私達はお二人に向かってお辞儀をする。


「いや。こちらこそ、いきなり今日の訪問を決めて申し訳ない。快く受け入れてくれて感謝する」


 クリストファー王子とブライアン様が爽やかな笑顔を見せたところで、ちょうど顔を上げた私と目があった。


(え?)


 その瞬間、私とブライアン様は金縛りに遭ったように動けなくなった。


(何? どういう事? 昨日、ブライアン様の姿を見た時は何とも無かったのに…)


 固まったまま、動かないブライアン様に気付いたクリストファー王子が、そっと横からブライアン様の肩を叩く。


「ブライアン、どうかしたのか?」


 クリストファー王子に肩を叩かれたブライアン様は、ハッと我に返ったように、クリストファー王子に顔を向けた。


「ああ、いえ、何でもありません。失礼いたしました」


 ブライアン様は気を取り直したようにこちらを向くと、何故か貼り付けたような笑顔を見せる。


 すると、クリストファー王子が私を見ておや、と首を傾げた。


「ええと、こちらのお方は? 昨夜お会いしましたか?」


「改めてご挨拶いたします。次女のアナベルと申します」


 昨夜、ザカライアが認識阻害の魔法をかけていたせいで、私の事をは覚えていなかったようだ。


「そうですか。そちらのご子息は?」


 クリストファー王子は私の隣に立っているコリンに視線を移した。


「コ、コリンと申します。よろしくお願いします」 


 コリンは緊張のせいか、少しうわずったような声でクリストファー王子に挨拶をする。


「コリン君か、よろしく。よければアナベル嬢とコリン君も一緒にお話しませんか?」


 てっきりお姉様とエラの四人だけで過ごすのかと思っていたので、クリストファー王子の申し出に私は少し驚いた。


 驚いたのは私だけではなく、両親とお姉様達もだった。


「それは構いませんが…。本当によろしいんですか?」


 お義父様が恐る恐る尋ねるが、クリストファー王子は本気のようだ。


「もちろんです。まだ知り合ったばかりですから、皆で楽しくおしゃべりしましょう」


 クリストファー王子にそう言われては断るわけにもいかないだろう。


 お姉様とエラは少し不満そうな表情を見せたが、すぐに気を取り直したように笑顔を見せる。


「それでは応接室にご案内いたします」


 お義父様はクリストファー王子とブライアン様と連れ立って歩き出した。


 その後ろを追いかけるようにお姉様とエラも歩き出すが、お姉様は一瞬私を睨みつけた後、すぐに顔を反らした。


(私が言い出したわけじゃないのに…)


 そう反論したかったが、今そんな話は出来ないし、言ったところで火に油を注ぐようなものだ。


 私はコリンと並んで皆の後をついて行った。


 応接室に入ると、お義父様とお母様はそのまま退出して行った。

 

 クリストファー王子とブライアン様が並んで座り、その向かいに私達四人が腰を下ろした。


 当たり障りのない話をしながらも、何故か時折ブライアン様が私を見てくる。


 私も何気ないふりを装いながらも、何故かブライアン様を見てしまう。


 しばらく歓談をしていたが、やがて二人は王宮へと戻って行った。


 二人を乗せた馬車が見えなくなると、私は誰よりも先に自室へと戻って戻った。


(一体どういう事? どうしてブライアン様を見ると心がざわざわするのかしら?)


 ソファーに身体を投げ出して背もたれに寄りかかり頭を押さえていると、目の前に光が飛び込んできた。


(ザカライア?)


 思ったとおり、飛び込んできた光の正体はザカライアだった。


「やぁ。ごきげんよう」


 ザカライアはおどけた調子で私に向かって腰を折る。


 その姿を見た途端、得も知れぬ恐怖のような感情が湧いてきた。


(何故? 昨日はザカライアを怖いとは思わなかったのに、どうして今日はこんなに恐怖を感じているのかしら?)


「今日は何の用かしら?」 


 さり気なさを装ったつもりだけれど、少しばかり声が上ずってしまった。


「えー、つれないな。せっかく遊びに来たのに…」


 ザカライアはそう言いながら、ソファーに座る私にズイと顔を近付けた。


「ねぇ、アナベル。今朝、変な夢を見なかった?」


 いきなりそんな事を言われたが、私は何とか平静を装った。


「夢? 見たかもしれないけれど忘れちゃったわ」


 私の返事を聞いたザカライアが意味ありげに笑う。


「へぇー、本当に?」


「ほ、本当よ」


 今すぐにでもこの場から逃げ出したい気分に駆られる。


 そんな私とザカライアを遮るように、別の光が飛び込んできた。

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