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第7話 社畜、転生してもやっぱり社畜、、、で終わるのか?

 ―男は絶望していた、男の名はタナカシンジ。


 前世で一度すべてを投げ出し、社畜からの解放を願ったものの、あのとき自分には自身で終わらせることもできない男だと悟っていた。


 あれから20年、あのときのように投げ出さなかったのは、この世界が剣と魔法のファンタジーなのもあるだろう。

 見るものが全て新鮮だったのは事実だし、いつか自分にもと何処か夢を見ていたかった。


 しかし、時価としか聞いていなかったスキルブックが遂にこのギルドに売りに出され、『剛力』という10年筋トレで手に入る一般的なスキルでも金貨50枚という値がついたとき、自分の中で誤魔化しきれない諦めがただよった。


 俺の給与は他の平のギルド職員と変わりない、月給銀貨50枚。生活費と年末にギルドを通して支払う市民税を引くと切り詰めても年間金貨1枚程度しか貯まらなかったのだ。


 そして、トドメとばかりに前世と同じような出来事が、この世界でも38歳となった俺の心を砕いていた。


「おい、君! 以前頼んでいた明日の領主様のご子息の結婚式用の祝辞はどうなった!」


 こいつは以前いた副ギルマスの後後釜で、子爵家の5男のマイヤーという。

 Cランク冒険者までいったが、そこで以前の副ギルマスが別の街のギルマスに昇進するため、後釜候補として連れてこられた男だ。


 しばらくは俺がここの仕事を教えていたのだが、当然のように今では立場が逆である。

 ちなみに30歳。


「その件は3日前の朝のミーティング前に渡したでしょう。まさか、紛失したのですか?」


 そもそも、そんなの俺の仕事じゃねーだろがという気持ちを抑え、単刀直入に聞くと


「きっ、君は任した仕事を放り出すばかりか、私のせいにするつもりかっ!!」


 と、顔を怒気で高潮させながら言ってくる。

 こいつはこいつで入った当初、貴族出身の自分が出自不明の平民に仕事を教わるのが腹立たしかったらしく、俺を嫌っている。


「はあ、わかりました、押し問答しても無駄なので今、ここで作りますね。」


 俺はここでの社畜生活でさらにジョブレベルを上げ、新たなジョブスキル『高速手記』と自身が一度見聞きした知識があればそれを書き起こせる『自動手記』を使い、三十秒で作成する。


 「ちっ、私に無駄な時間を使わせるなっ。」

 

 そう言いと祝辞を引ったくり部屋を出ていった。


 

 「はあ〜、やめて~」 1人愚痴る。


 過酷な労働の最後に心を折るのは大抵こんな風景らしい。

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