トンネルを超えると。。。
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1.
トンネルを越えると、そこは猫のお尻だった。
真っ白なアーチが更に先へ連なる。
真綿のようなふわふわした甘美な世界。
ピンク色の蕾が花ひらく。
そこは猫のお尻。
突然のことに僕は驚いた。
あっけにとられてぽかーんと口を開いて突っ立っていたところ、後ろから柔らかいものが背中をポンと押してきた。
ビックリして振り向くと、大きな鍵のような形をした猫の尻尾が僕の後ろで振り子のように揺れていた。
元いた場所の景色がかすんでゆく。
なんだかよくわからないまま、猫から歓迎された気がして僕はとりあえず歩き始めた。
白いふわふわの洞窟に入ると、周囲があたたかく感じた。
思わず手を伸ばし、そのふわふわに触れてみる。
あたたかい毛布みたいにモコモコで、確かに雪ではなかった。
なぜかホッとしたところで、僕はコーヒーが飲みたくなった。
自販機を探すがもちろんあるはずもない。
仕方なくそのまま歩きながら、ポケットに手を突っ込むと、中からコイン2枚とチョコレートが1つでてきた。思わずチョコを頬張り目を閉じる。
目を開けたら元の景色に戻っている予定だったが、相変わらず景色は白かった。
猫アーチの間から外を眺めると茜色の空がみえた。夕暮れ時なのか、、、
突然、宇宙のようなまん丸のビー玉がギョロリと前から覗きこんできた。
プレパラートに散りばめられた小さな宇宙のようにキラキラと光って、ジーッと僕をみつめてくる。
一瞬ギョッとしたが、瞳の奥に静かな優しさを感じて僕はまた安心したのかそこで眠りこけてしまった。
2.
ほじっても、ほじっても
脱走犯は焦った。
看守の目を盗み、どうにか手に入れたペンを使って、先ほど獄中から逃げてきたばかり。
外界に出ようと、大の男がどうにか通れる筒をほふく前進ですすんでいるところ。
しかし、あと少しというところで前方にスッポリと何かがハマって邪魔をしているのに気がついた。
まさかこんなところで引き返す訳にはいかない。なんなんだこの邪魔なもんは。。。
脱走犯は目の前にある、丸い大きなものを懸命に押し出そうとした。
ビクともしない、どころか何か獣のような匂いがする。
薄暗くてよくみえないが、何やら茶色いものが詰まっていた。
仕方なく、口にペンを加えて、両手で
かき出してみようと指をかける。
土かと思っていたが、茶色いヤツは、
どうやら違うもんのようだ。
左手の中指が凹みに滑り込んだ。
なんだこれは、、、柔らかい。
なんだこれは、、、あたたかい。
もう一方の指で更に広げてみる。
意外に硬くて上手くいかない。
何かコツがあるのか。。。
仕方なく顔を近づけ、力づくで両手でかき分けながら頭を突っ込んでみる。
いかんいかん。これは無理だ。
臭すぎる。狭すぎる。
脱走犯はそのまま気絶してしまった。
彼は一体何をしていたのだろう?
そこは猫のおしり。
3.
目を覚ますと。
バスが来ていた。
あー!っと思い、急いで飛び乗る。
どうにか間に合った。
バスは何事もなかったようにそのまま発車する。
ハッとしてトンネルの方を振り返ると、何もみえなくなっていた。
車内アナウンスで座席にお座りくださいと言われ、しぶしぶバスの後ろの席へボフッとおさまる。
はぁ〜。
ふぅ〜。最近疲れ過ぎかな。。。
今日こそはゆっくり休もう。。。
気持ちが落ち着いて、窓から景色を眺めようとした時、
スマートフォンからラインの呼び出し音がポン♪と鳴った。
何気なく開いてみる。
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にゃんこ通信@気まぐれ
今日の通信 ○年○月○日
拝啓 僕様
今日は来猫まことにありがとにゃ♪
またゆっくりおいでにゃ〜(=^x^=)
今度はチュール土産に持ってきてにゃ♪ ミルク
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あいつ、ミルクって名前なんかぁ。
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