冒険者の魅力
atmxm
次の日、私たちは森を抜け、湖にあるダンジョンの奥へと入っていった。
途中にいる、魔物たちは、エレスと私で倒していった。
ある理由のために。
「私、正直言って、お姉様たちのことをかなり誤解してました。
てっきり私、お姉様がたは、かなり頭のおかしな方々だと思っていましたから。
なんか街での噂も、あまりよくなかったですし。
いきなり初日から酒場でほかの冒険者の武器を盗んで、しかもケンカを吹っかけてベテラン冒険者をフルボッコにしたり、街中で昼間っからケンカして魔法をぶっ放したり、ギャンブルを無理矢理催促して不当にも大金を巻き上げたり、でも全部、単なるウワサだったんですね。」
なんか私たち、ひどい言われようだ。でも、半分以上は間違っていないけど。
私は冷や汗をかく。
「で、これからどうするの。
もう、孤児院への仕送りの心配はなくなったでしょう。
あなたが冒険者をする理由はなくなったでしょう。」
「それはー」
エレスがそう言うと、フィルがうつむき、立ち止まる。
「来たわよ!」
エレスの瞳の色が変わった。
命がけの戦いを予感する瞳だ。
前方から、様々な種類の魔物が数十匹
迫ってきた。
全て上級レベルだ。
やはりここ1月、強い魔物の出現率が上がっている。
「下がってなさい」
私はフィルの腕を掴み、後ろへ下がらせる。
「キャッ」
尻もちをつく彼女に、杖を投げつける。
彼女は受け取ると、すぐに立ち上がる。
新人研修の時間は終わったということに気がついたのだろう。
これからは、真剣勝負だ。
「 フィル、あなたは後方で援護して!!
これからは、プロの修道女としてのあなたに期待しているわよ!!」
「は、はい!!」
「 エレスは彼女を守ってあげて、私が敵を撃つわ!!」
「イエス、あなたも、あまり調子に乗らないでね。」
エレスは彼女の前方にたち、レイピアを構える。
「スピリトゥス」
私は肉体強化の魔法、スピリトゥスを唱える。
私の肉体を魔導力の輝きが包み込み、私の身体能力や反射神経などを向上させる。
「ファイヤーボルト!!」
さらに私は、炎の魔法を唱える。
前方から炎が出現し、連続で発射される。
前方から迫りくる十数匹のトンボやクワガタムシなどの巨大な昆虫型の魔物に直撃し、炎で包み込み、消滅させる。
あれから魔法具による戦闘を繰り返した私は、経験を積み、なんとか2つの魔法具を使えるようになっていた。
魔法が使えないハンデを克服するため、私は肉体強化の腕輪と炎の指輪の2つを装備している。
その後ろから、炎の巨大トカゲと呼ばれるサラマンダーが10匹走ってくる。
炎系属性に強いサラマンダーは、ファイヤーボルトをその赤い皮膚で跳ね返す。
私は炎の指輪の効力を解除して、指輪をアイテムボックスに放り込む。
かわりに、そこから冷気の剣を取り出した。
だが、魔法具と精神を接続させるには、数秒かかる。
「 エレス、援護お願い!!」
了解!!
「エアロ!!」
エレスが風の魔法を発射する。
数発の回転する風の流れが接近する4匹のサラマンダーに直撃して、吹き飛ばす。
その間に、冷気の剣と精神を接続させた私は、その剣で残りのサラマンダーたちを次々と斬りつける。
6匹のサラマンダーたちが凍りつき、砕け散る。
バァァアアー
前方から、光属性の魔法、ライトニングビームが発射される。
私の左腕を切り裂き、血しぶきがあがる。
数十メートル先に、六本の足を持つ魔導ロボットが待ち構えていた。
ビームを発射したのは、中央の巨大なレンズである。
チッ 私は舌打ちする。
「フィル!!」
わかってます!!
「ケアル!!」
フィルの唱えた回復治癒魔法で、私の傷は回復する。
私は氷の剣を解除して、アイテムボックスの中にある新しい魔法具と精神を接続する。
ちなみに、ボックスの扉、つまり、次元空間の扉を少しあけて、空間に隙間を開けておけば、魔法具を取り出さなくても精神を接続させる事ができる。
「エレ!!」
エレスの方を振り向くと、エレスは迫りくる8匹の魔物と戦っていた。
私が打ち漏らした奴だろう。
フィルを守りながら、レイピアや風の魔法などで応戦している。
新しい魔法具との接続までの数秒、私は自分一人で時間を稼がなくてはならない。
ロボットが襲いかかってきた。
私はジャンプしてロボットの直接攻撃をかわすと、巨大なハンマーを取り出す。
そして落下するのと同時にそのハンマーを叩きつける。
剣などの薄い武器で斬りつけても、硬い金属でできたロボットにはダメージを与えられないので、重量の重い武器をたたきつけて衝撃を与える。
キィィーン
ハンマーを叩きつけた反動で、私の体は1回転して飛んでいく。
ハンマーを叩きつけたのは、ダメージを与えるためではない。
衝撃を与えた時の反動で私の身体をワザと吹き飛ばして距離をとるためである。
地面に着地した私は足をひねる。
こちらに振り向いたロボットが、再びライトニングビームを発射した。
足を痛めた私はかわせない。
私はビームが直撃の瞬間、巨大な鏡を取り出した。
ライトニングビームは、光属性の魔法なので、光の粒子と同じ性質を持つ。
鏡がビームを反射して、ロボットに命中する。
接続完了!!
私はアイテムボックスから、電撃のムチを取り出した。
サンダーウィップ
そして、そのムチを振って、ロボットに叩きつける。
金属のボディーに電流が流れ込み、
ロボットは煙を出してその場で崩れ落ちた。
「やったァァあああ!!
凄いです!!マリーさん!!」
フィルが大喜びではしゃいでいる。
「足をひねったのよ。
喜んでないで、早く治して。」
私はため息をつく。
10日後、私とエレスは、朝からギルドへ向かっていた。
「フィル、もう故郷に帰ったかしら。」
エレスが言った。
「ええ、そうね。もう、彼女には戦う理由がないですもの。」
「 彼女のこと、少し残念だったわね。でも、これで良かったのよ。」
「うん、そうだわね。」
私はエレスの顔を見つめながら、そう答えた。すこし、寂しげな表情をしていただろう。
フィル、もし冒険者になっていたら、どうなっていただろう。
根性のある彼女なら、エレスや私のような強い冒険者になっていただろうか?
そう、思っていたとき。
「アベルさん、あなたはもう少し、冒険者としての自覚を持って下さい。
みんなを置いて1人で魔物に突っ込んでいくなんて、バカのすることです。」
ギルドに到着すると、どこかで聞き覚えのある少女の声がした。
そして、彼女がこちらを振り向く。
「あ、マリーさんにエレスさん!!」
「フィル!!どうしてここに!!」
私たちは、二人でハモって声をだした。
「どうしてって、もちろん冒険者をするためですよ。決まってるじゃないですか。」
もちろん、彼女がここに残るという事は、冒険者になることを意味しているのだろう。
しかし、私たちが思っている事とはそういう事ではない。
なぜ、冒険者になる道を選んだのか?と言う事だ。
冒険者は過酷で危険な世界だ。
それは短い間だが、私たちと旅をして、よくわかったはずだ。
それから、どうやら、彼女はすでに所属するパーティーを見つけたようだ。
私たちが知らない間にアベルさんたちのいるパーティーに入って、すでに依頼を受けて遂行して来たらしい。
「でも、あなたにはもう、戦う理由がない。」
「理由ならあります。私はお姉様たちのように、強くなりたいんです。
強くなって、お姉様たちのように、誰かの事を救いたいんです。」
「フィル。」
「それに、私はもう、冒険をする事の魅力に取り憑かれてしまいました。
お姉様たちと一緒に過ごした数日は、もっとも過酷で、そして、もっともワクワクしていて充実した日々でした。
お姉様たちもそうでしょう。」
「バカね。フィル、さっさと故郷に帰れば良かったのに。」
エレスが苦笑いを浮べる。
「フィル、冒険者の世界は、甘くはないわよ。
でも、それでもいいのなら、私たち冒険者たちは、いつでもあなたを歓迎するわ。」
そう言って、私はそっと手を差し伸べた。




