デート
kmwm3
チュンチュン
小鳥のさえずりで私は瞳を覚ました。
先に起きていたエレスが鏡の前に座って、髪をとかしている。
「エレス 」
「おはよう、マリー。昨日はよく眠れた?」
エレスが鏡に反射する私を見ながら言った。
「ええ、本当はもっと起きて、エレスちゃんとイロイロいけないことをやりたかったんだけど、何か急に眠くなっちゃった。」
エレスちゃんの寝顔を観察したり。
「 そう、でも、先に眠ってラッキーだったわよ。何をするつもりだったか知らないけど、私に指一本でも触れたら、氷漬けにして湖に沈めるところだったわね。」
エレスが笑顔を浮べて、静かな口調でいった。
「 エレス、言葉の内容が猟奇的すぎる。」
「それで、あなたは今日どうするつもりなの?」
エレスがこちらを振り向いて言った。
「エレスちゃんはどうするの?」
「 私?私は今日は、1日かけてショッピングでもしようと思っているの。
武器や魔導服もそろそろ新しいのに
買いかえたいし。」
「そうなんだ。」
「 ねえ、私もついていっていい?」
「駄目」
「うわっ、即答!!
どうして?昨日は泊めてくれたのに、なぜ一緒にお出かけするのは駄目なのよ」
「それは」
彼女がなぜ、私の事を避けているのか?いや、他人のことを避けているのか?それはわからない。
だけど、彼女がなぜ昨日私を同じ部屋に泊めてくれたのかはわかっている。
どこかにポーションでは回復できない
後遺症はないか?ステータス異常がないかを確認するためだ。
けれどもやはり、私の事を自分のそばには近づけたくない。
「それに、私のしつこさ知っているでしょう。街中にゴールドをばら撒いてでも、あなたを探し出すわ。」
「 そんなことで、私を脅しても無駄よ。」
「ギルドの冒険者全員に私たちは恋人同士だって言いふらすわ」
「辞めなさい!!
あなた、本当に八つ裂きにしてブルーフロックのエサにするわよ。」
エレスは激昂すると、ため息をついた。
「もう、いいわ。勝手にしなさい。」
「やったー!!」
そして、私とエレスは、それからお買い物に出かけた。
エレスは新しい剣と衣服、私は、重複する武器や防具を換金してさらにレアアイテムを買い漁った。
「 一番上から、ここまでを100個ずつ、それに、ポーションを3000個下さい。」
私はアイテムショップのメニュー表を読みながら、レストランで食事をするように注文する。
隣でエレスが呆れている。
「あなた、凄い爆買いするわね。」
「 アイテムは、幾つあっても多過ぎるってことはないわ。
エレスも、ほかに欲しいものはない?」
そう言うと、私は購入したアイテムをボックスに放り込んでいく。
「その能力、どうやって身につけたの?
あなたの固有スキル?」
「 普通の、アイテムボックスよ。
ただこの数年間、毎日朝も昼も夜もこの能力と剣技だけを鍛えてきたの。」
そう、この5年間、私は村の子供たちと剣の訓練をした。
そして、岩や木材、食料などをボックスに収納し、あるいは解錠して取り出す訓練を1日中繰り返した。
「 あなたには、魔法が使えないから?」
「 うん。」
「 エレスちゃんは、どこで剣技を身につけたの?魔法の訓練を受けてきたの?」
「 私は?」
「 あ、あれは、アイスクリームだ!!
凄い、この世界にもあったんだ。」
店の窓から見える屋台を見つけて、私は叫んだ。
少し感動。
「 何言ってんの。そんなの、珍しくも何ともないわ。
あなた、本当に田舎育ちだわよね。」
「 冷凍庫もないのにどうやって作るの?」
「 氷魔法よ。私でも作れるわ。」
「そう、じゃあ今度エレスに作って貰うわ」
「 何勝手なことを。」
「 ねえ、エレス。一緒に食べよう。」
「嫌よ。あなた1人で食べればいいでしょう。」
「 どうして?」
「 そんな野外でお食事なんてはしたない。それに、あなたと2人で一緒に食べるなんて、恥ずかしいじゃない。なんだか友達みたいじゃないー」
「 友達みたいじゃないって?ひどい。私たちって、もう友達でしょう。エレス。
それに、お外でお食事するのがはしたないなんて、そんなの偏見だよ。私の世界ではみんな食べてるよ。
私の異世界での初アイスクリームはエレスと一緒がいいの。」
「 初アイスクリームって?
わかったわよ。しょうがないわね。
1回だけよ。」
「やったー」
この先何回でも、何百回でも。一緒に食べるんだ。
私はそう決心した。
そらから、私たちはアイスクリームを2人並んで一緒に食べた。
私たちは2人でプライベートライフを楽しんだ。
エレスちゃんとのドキドキデートだ。
お洋服屋さんに行ってプライベートに着るお洋服を買った。
ファンシーショップでは、クマやウサギなどのぬいぐるみを数十匹買った。
エレスがあきれていた。
そして、川沿いを2人で歩いた。
「 マリー、あなた、あんな大勢のぬいぐるみたちを、いったいどうするつもりなの?
宿屋じゃ飼えないわよ。」
「 大丈夫、アイテムボックスの中に部屋ごと収納するから。
ソファーやテーブルも入れておくわ。」
「 もう、あなたって娘は」
エレスがため息をつく。
「今日は楽しかったわ、エレス、異世界に来て、いいえ、マリーとして生まれて、こんなに楽しくてこんなに幸せなのははじめて。
私、この世界に生まれてきてよかったわ。」
私はエレスの瞳を見つめながら言った。
エレスが少し、顔を赤らめた気がする。
一瞬だけ、前世の記憶が蘇り、親友を死なせてしまった罪悪感が心をよぎった。
でもすぐに振り払う。
今度こそ、ここにいる新しい友達、エレスを守り抜いて、前世で失った未来を取り戻すんだ。
「 大袈裟ね。」
「 あらためて、エレス。自己紹介をするわ。
私の名前は、マリー・キャンベル。
基本魔法を使えない無能力者の美少女冒険者よ。
でも、この街で現在もっとも強くて、もっとも優秀な冒険者でもあるわ。
いずれはもっと強くなって、世界中のどんな英雄や魔物も乗り越える。
打ち破ってみせるわ。
そして、エレス。
あなたの行こうとしている場所。
あなたの願いや夢。
その場所に向かって、私もあなたと共に歩いていきたいの。
あなたの、手助けがしたい。
だから、私と、パーティーを組んで。
私を、あなたの戦友にして頂戴。」
そう言って、私はエレスに手を差し出した。
「 あなたは本当に馬鹿ね。あなたは、この街で、いいえ、この世界で1番の愚か者よ。」
そう言って、エレスは私の手をとった。




