序章 0,5話 ある魔法使いの話
どうも、八咫鏡光と申します。『序章 0,5話 ある魔法使いの話』を投稿しました。まだまだ本編が始めるのは先ですが、これも重要な話なので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです!
魔法使い‥‥‥。
本来は『神秘使い』という名で呼ばれている人たちで、その名の通り普通の人間では実現できない不思議な力を持つ存在。あらゆる世界で、その人達は一般社会に紛れ潜んでいる。彼らは星の大気の中で満ちる神秘と呼ばれるものを借り、炎を生み出したり、傷を癒したり出来ることは基本何でも出来る。ただ、その力は内容によってはあらゆる事象を変えたりすることも出来る分、危険性も孕んでいる。その戒めとして神秘が使えない人間にみだりに見せるのは禁忌とされている。もし、それを破るものならその違背者を輝きの向こう側へ連れていかれるのだという。
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ある朝、目覚めるとキューキューと動物に似た鳴き声が聞こえた。声は家の裏庭だった。まだ肌寒い季節なのに■は急いでサンダルを履いて、その鳴き声がする裏庭へ向かった。
鳴き声の正体は黄金色の子狐だった。見た感じかなり弱っている状況だった。体は瘦せ細り、ほぼ骨が見えている状態だった。親や兄弟ともはぐれて、ここまで彷徨っていたのだろうか?なんにせよ生きているのなら助けなくては‥‥‥。■は急いで両親の方へこのことを話すが、なかなか聞き入れてもらえなかった。両親は動物が苦手で金魚でも『絶対に飼わない』と強く言われていた。とはいえ■としては、弱っている狐を放置するわけにはいかなかった。
”森の中には魔法使いがいる”
小さい頃、眠れない時に父がよくその話を聞かせてくれた。自分が住む小さな町の隣には、大きな森がある。その森に家がぽつんと一軒あって、そこに魔法使いがいるのだと。
■はすぐに弱っている子狐を抱えて森に入った。寒さで指先と足のつま先が痛い。それでも、ひたすら森の中を駆けて行った。どれくらい森の中へ入っただろう。途中でやけに開けた所を見つけた。そこに、如何にも崩れそうなボロボロの木の家を見つけた。
「もしかして‥‥‥魔法使いさんの家?」
すると、ギィと音を立て扉が開いた。中からはこのボロボロの家に住んでいるとは思えない顔が整った好青年が出てきた。青年は■に気づくと柔らかな笑みを浮かべ、
「どうしたんだい?」
‥‥‥と優しく声をかけてきた。ハッと我に返った■はその青年に事情を話した。
「なるほど‥‥‥。その子を君は助けたいんだね?」
「はい」
「なら、お安い御用だ」
「え?」
返ってきた答えはただそれだけだった。普通の人間なら、すぐに病院にでも連れていけ。面倒なものを持ち込むなと両親のように突っぱねられるのかとビクビクしていたが、彼はそれを受諾した。青年は少し深呼吸をするとこちらを振り向き、
「今からその子を助ける御呪いをするから、あそこの部屋で待っていなさい」
そういって、■を指さしたほうの部屋へ行くよう指示した。
「これからすることは誰にも明かしてはいけないものなんだ。バレてしまったら、助けるにも助けられなくなるからね。だから、あそこの部屋で待ってて。僕が合図するまで、決して覗かないように‥‥‥」
■は黙って頷き、言われた通り部屋で待った。半時間も経たないうちに『終わったよ』という合図がやってきた。部屋を出ると、さっきまでガリガリに痩せていたのが嘘のように、しっかり肉がついて元気になった子狐がいた。キューキューと可愛らしい鳴き声を上げて■のほうへ駆け寄ってくる。
「すごい‥‥‥。こんなに早く元気になるなんて」
「言っただろう?お安い御用だ‥‥‥って」
「お兄さん。一体誰なの?」
「う~ん。そうだな‥‥‥」
青年はしばらく考えた後、■に顔を向いてこう答えた。
「僕はねぇ‥‥‥。魔法使いなんだ」
噂は本当だったんだ。■は魔法使いに出会えたことが嬉しくて、その後両親や友人にそのことを話してしまった。自分のした事が一体どれほどの重罪であるか、■は知る由もなかった。
それから、その青年の姿を見ることはなかった。そして、彼が居たという記憶も誰一人残ることは無かった‥‥‥。
『序章 0,5話 ある魔法使いの話』でした。次回こそ第一話が始まります。第一話もお楽しみに(*^-^*)