LV59 1/2(土)-3
カメの降り方。
俺は、わからない。
飛び降りればいいのか?止まってくれと言えば良いのか?日本語で良いのか?どうすりゃいいのか?
俺は彼女の部屋に誘われるままに上がり込み部屋主のゆるふわちゃんの寝息を聞きながら彼女の愛らしい寝顔を観察中だ。部屋は日本の感覚だと4.畳半程度、そこにベッドと最低限の身支度を整えるための家具があり、残りはほぼ歩くスペースだ。
彼女の部屋は、大通りから入った路地を数本経由して、周囲を古いアパート群が取り囲むところにあり、大通りの喧騒こそないが、時折、大声で話す人の声や怒鳴り合う様な、ここ特有の生活音は派手に聞こえていた。
彼女がベッドにもぐりこんで、お話をせがむので枕元で俺の身の上話を子供を寝かしつけるが如く、話して寝かしつけた後に、俺自身もゆるふわちゃんの眠るベッドの下で横になり、これからの事について思いを馳せていた。ベッドで彼女は数時間眠り続けている。
時間は22時を過ぎて久しい。
そして、今、ベッドの横に座り直し、目の前の眠り姫が目を覚ますのを待っている。
しかし、ここで眠り姫を見ていてもこの先物語が動き出すようにはとても思えず、意を決して俺の知りえるスイッチを押した。そう、バスの降車ボタンを押した。この時間遡行の旅を終えるための準備を始めたわけだ。それは、眠り姫と会話することから始まると信じているから。
「ゆるふわちゃん? 起きて? お話ししようか」
俺の観察が著名な動物学者や最悪、天体観測マニアのレベルになくても、このボンクラでも、目の前のベッドに入りキレイな寝顔を見せているゆるふわちゃんが、おそらくここ30分位、寝ていない、寝たふりをしていた事は分かっていた。
「な~に?」
ゆるふわちゃんがおどけて目を開け、
「寝たふりしてたのに!」
という。
あまりにも綺麗に寝すぎていたゆるふわちゃんを見て俺は怪しんだ。ここのところ酷い有様の上妹と、ときおり、くんずほぐれつの寝相悪さデスマッチをベッドで激しく展開していた俺なら、このキレイな寝相は直ぐに、一目で、パッと見て本物ではないと断定出来た。上妹ありがとう。
「ゆるふわちゃん、そろそろ終わりにしよう。悪いが俺はこの舞台から降りなければならないんだ」
俺達は終いの、終幕の、エンドロールの準備を始めた。
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