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召喚されたらリアルダンジョンだった! 自称女神との日常異国ライフ   作者: 樹本 茂
第一章 女神

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LV0 初音さん6 日曜日

「ボウリングも、下手なあなたと一緒にやると中々楽しいものね」


今日は初音さんとボウリングをして帰るところだ。冒頭、初音さんの言ったセリフは俺が72、初音さんが58のベストスコアを叩きだしたときに放った一言だ。


「ねぇ。今夜でお別れだから何か美味しいものでも食べに行きましょう。最後の想いで作りに」


訳アリの二人の様なセリフを吐いて食事に誘ってくる。

確かにそうだ。明日の昼、初音さんはホテルを出て自分の部屋に帰ることになっているからだ。


過ぎてしまえば楽しい思いでのみと言ったところか。


「どうだった?楽しかった?」


俺が半ば楽しかったよな。と言ったニュアンスで遠くレストランの窓から見える夜景を堪能して、心ここに有らずの初音さんに選択肢を与えたつもりのない質問を投げかけた頃、メインの肉と魚がテーブルに並んだ。


今いるレストランは市内でも2つしかない5スターホテルのレストランで、そこでおフランス料理のコースを食べていた。その辺の餃子屋で良いという初音さんを半ば強引に誘う形でお連れしているのだが。美味しいものが餃子だったのか初音さん。


フロアは全50階のホテルの上から2つ目、景色が悪いわけが無く、遠くかすむ地平の方まで広がる人工的な赤や青、黄色、白、街の通りを装飾しているLEDが夜景の一部になって彩を添え、この街の勢いを示している。


フロアは50テーブル程の大きさで豪勢なシャンデリアがフロアの天井4か所にあって全体に照明は落とされていて落ち着いた雰囲気を演出している。客の入りは6割程度だ。


「ねぇ。こんな話し知ってる?」


料理が来たことで別世界に旅立っていた初音さんが俺の目を見るとそんな質問をわずかな微笑みと共に投げかけてくる。


「昔、ある一人の男が天女に恋をしました。その男は天女が好きで好きでたまらないのです。天女もその男の事は好いていると男は考えていました。


そこで、男はいてもたってもいられなくなり、天女を娶りたいと神様にお願いするのです。


神様は言います。


“お前の大切なものと交換しよう。そうすれば天女をお前に下げ渡そう、だが、お前に下げ渡したときから、それは天女ではなく、何の力もない普通の女になるのだぞ。それでもいいのか?“


ねぇ?男は何と天女を交換したと思う?」


初音さんが珍しくまじめな顔をしながら俺の前にあったキャンドルを見つめて問いかけてきた。


「そうだなあ。俺なら自分の命かな」


「あなた、それじゃ死んで終わりじゃない。そうじゃないの。男は天女の気持ちを考えてあきらめるのよ。天女は力を失っては絶望してしまうだろう。そんな事を自分には決められないってね」


「そうか……天女の気持ちがわからないもんな」


「そう、天女が力を失いたくないのかは男にはわからない。天女に聞く方法も無い。だから、あきらめたのね。でも、どうなのかしら?天女は本当はどう思っていたのかしら?


私は、天女はそれでも男と一緒に居たかったって思うわ。男が天女を本当に好きならば、天女はそんな事は関係ないって思うはずよ……男はもっと自信を持つべきだった、きっと男に好きなサインを出していたはずなのだから……それを見逃してしまったのね……」


「どうしたの?初音さん」


初音さんは、俺の瞳に問いかけているように見えて、別の見えない何かと話をしている様に思えるほど視線の焦点が合ってなくて、思わず俺は思ったことを口にした。


「なんか急に思い出してしまったわ。ま、よくある普通のおとぎ話ね」


俺の問いかけに気持ちが戻って来たのだろうか、いつものように微笑み返してきた。


初音さんはメインの鯛のホワイトソースがかかったなんちゃらに満面の笑顔で味を体現して再び遠くを見ながら白ワインの入ったグラスを傾けて話を継いでくる。


普段から話好きな初音さんがワインのせいなのだろう一層、饒舌になり俺はひたすら相槌を打つことで初音さんの気持ちを盛り上げている。


「私ね。妹が二人いるの?初めて話す?そう?私の下は20歳で大学生、その下は18歳で高校生。二人とも私と同じ美人よ。それでね、この二人が去年、広州で広州軍区の特殊部隊とやり合ったのよ」


「ちょ、ちょっと特殊部隊とやり合うって何言ってんの?初音さん」


「……あ!そんな夢を見たって話。ダメだ、これオチが無いから聞かなかったことにして。もう少し盛ったら話すわ」


顔を赤くした初音さんは目を丸くして必死に繕っている。


「そんな事より、4日間想像以上に楽しかった。一緒に誰かと生活するのってこんなにも楽しいものなのね。誰かじゃないわね。あなたとだからだったのね。素敵な日々をありがとう。私の大切な宝物になったわ。これなら、またお泊りに来てあげてもいいわよ。どう?」


初音さんの潤んだ瞳にキャンドルの灯りが揺れて俺に答えを求めていた。俺はいつもの初音さんのノリなのだろうとそれほど気も留めず、


「大赤字だよ……でも、俺も楽しかったよ。いつでも歓迎するけど、次はきっちり身体で払ってもらうからそのつもりで」


おれの本音も入れて軽口で返してやった。初音さんは完無視だが。


俺は、この日を境にご飯を食べに行くレストランの従業員というちょっと知っている人から頭一つ、いや、かなり特別な存在へと初音さんを意識せずにはいられなくなってしまった。


だって、初音さんは俺が思っていた以上に繊細で、はかなげなところがあってちゃんと見ててあげないと壊れてしまいそうな心の弱さが見え隠れしてる女性だった。それを不遜な態度でコーティングしていたのかと俺は理解した。そんな風にわかってしまうと、あの態度も可愛く思えてくるから不思議なものだ。


この次遊びに来たらどこに行って何をしようか?初音さん。俺はいつでも待ってるよ。

17時過ぎ更新です。

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