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3(ウルフ目線)

今回はウルフ目線です。

「もちろんですわ、殿下!楽しみにしています。やっとですのね」


久しぶりに聞くエミリアの美しい声。聞き耳を立ててはいけないと思いながら、殿下とエミリア、そして小柄な女性が話しているテーブルの方へ意識がいってしまう。


そう1年前、突然エミリアから突き付けられた言葉。


「ウルフさま、今までご迷惑をお掛けしました。もうこれからはこの様な事は致しませんので」


あれはなんだったのだ!


5年間、私を見ると嬉しそうに「ウルフさま〜」と呼び、美しい笑顔で側にやってくる。それが当たり前だった。公爵令嬢のエミリアと侯爵令息の私が会う事は滅多にない。王宮で会うか、たまに顔を出す夜会で会うかぐらいだ。でもその度に私の側にやってきた。

しかしあの日、それは突然終わりを告げたのだ。


エミリアは誰が見ても美しい女性だった。

アーサー殿下のお妃候補の一番手であるが故の努力も惜しまずしており、内面も美しい女性だ。そんなエミリアに好意とも取れる態度で寄ってこられたら、どう反応すれば良いのか困っていたのが本音だ。まだ決まってはいないが、殿下のお相手なのだから。


私は生まれつき、冷たい目をしていた。

両親からは


「近衛騎士を目指す者、優しげな目元より、鋭い方が良い」


と言われて育てられた。

だから私は氷のウルフ等と女性から言われているらしい。

しかしエミリアはこの冷たい目が素敵だと言う。

変わった女性だと思っていたが、嫌な気持ちはしなかった。むしろ好意すら寄せていたのだ。


あの日、突然別れのような言葉を言われた日から数ヶ月後、アーサー殿下が頻繁にエミリアへ手紙を送っている事を知った。


「やはりエミリア公爵令嬢に決まったみたいだな」


「王太子妃がエミリア様なら誰も文句はないな。お似合いだし、なぜ今まで引き伸ばされていたのか不思議なぐらいだ」


「殿下がご執心のようだぞ」


など耳にまで入ってくる。


そう言う事だったのか。殿下との婚約が決まり、私から離れたのだと悟った。


そして今日、シルバーのドレスに身を包んだ美しいエミリア。

殿下がエミリアの腰に手を当てエスコートする姿、所々きこえてくる会話、もうこの想いは断ち切らなければならないと思った。


しかしエミリアは私を見つめている?

会話をしているのは、殿下ともう1人の女性がほとんどだ。

エミリアはシルバーのひっそりとしたドレスに対し、もう1人の女性はピンクのドレス。私の方が主役だと思わせるような。


なぜだ?違うのか、エミリア?君を忘れなくても良いのか?


未練がましい自分にうんざりしてしまう。

どうすれば良いのだ…


※※※


エミリアたちを見送り、殿下を自室へと護衛し、部屋の前で待機しようとした時、殿下より


「ウルフ、少し話があるから入ってくれるかい」


と声が掛かった。

私が中へ入ると殿下は話を始めた。


「久しぶりに見たエミリアをどう思った?」


どの答えが正解なのか。なぜ私に聞くのか。

訳がわからず、不敬に当たるのではないかと思いつつ黙っていると


「ウルフ、すまない。私の意地悪だと思って許してくれ。あと半年、王家主催の夜会まで辛抱してくれ。夜会が終われば、素直に行動するが良い」


それだけ言うと、話は終わったと言うように背を向けた殿下に一礼をして部屋を後にした。


この日以来、私はモヤモヤしたものを抱えながら過ごしている。

もちろん、王宮へ殿下に会いにくるエミリアを目にする度に切ない想いも同時に抱えながら。


次話で完結予定です。

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