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EP00-6



(彼女は恐らく……処分されたんだろな)



 他人事のように思考する。

 実際他人事ではあるのだが、目覚めてから初めての人間らしい感情を向けてくれた相手。何より、自分が人間らしい当たり前の感情の温もりに飢えていたのに彼女が居なくなったことで気づいた。

 もう少しだけ触れ合っていたかった思いが少なからずある。

 


 正直、遅かれ早かれ彼女がいずれ消されるのは分かってはいた。

 高度かつ違法であるだろう技術によって生まれた実験体と思われる自分に過剰な接触をし、あまつさえ感情移入した愚か者。これだけでも処分対象にしても良いレベルだし、文字を教えるということに限らず知識を与える行為はは慎重に行わなければならない。

 


 何故なら、製造者の目的が何処にあったとしても、知識と知恵は余分な反抗心を生み出すし、それ以外の様々な不利益な事態に陥ることは多い。せっかく生み出した実験体、それを都合良く動かしたい場合は、知識はただ与えるのではなく制御することが一番重要なのだから。



 この場所はどう見ても最先端技術の塊、そんな場所で働けるほどの知性を持つ彼女がそんな単純明快な事実を理解していないはずもない。何も出来ない、触れることはおろか言葉をかけてやることもできない自分にはどうしようもなかったことだと感情を割り切らないといけない。



(割り切らないとわかってるけど。中途半端に文字を教り……一瞬でも意思を繋げたせいだろうな)



 胸中に押し寄せる自己嫌悪。

 自分が心に戒めた内容を守るきるのには頑強な自制心がいる。それができなかったことに人間味を感じられるのは、詳細を思い出せない『俺』がちゃんとした人間の感情をある程度有していたことの証。この場合、喜ばしいことかどうかはわからないが。



 軽いため息を吐く。

 培養カプセルに満たされた液体の中、以前見たようにため息の分だけ生まれた泡がカプセルの上部へと昇って消えていく。

 


(あれ、そういえば呼吸ってどうやってるんだろう? 今まで意識してなかったけど……ナニコレコワイ)



 『俺』としての知識の中に、人造人間とかいうロボットのコクピットにLCなんとか水が用意されていて、その水で肺が満たされると直接酸素が取り込まれるとかってあるし、そういう技術の液体なのだろうか? うん、色々と怖いし考えるのは止めることにしよう。 



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