二人よがり
「ねえねえ、私のこと好き?」
「もちろん! 俺が世界で一番愛しているのは君だよ」
「じゃあさじゃあさ、私のどこが好きなの?」
「君の一生懸命なところかな」
「嬉しいな! 私は君の優しいところが好き!」
「優しいかなぁ? そこまで優しくないと思うけど」
「ううん。優しいよ。この前だって、私のためにリンゴ買ってくれたじゃん。私の好物だって、わかって買ってくれたんでしょ?」
「そうだね。そっか、俺は優しいのか~。ふ~ん」
「調子にのってるところ悪いけど、せっかく天気が良いみたいだし、桜がみたいな」
「桜ついでにお花見でもするか!」
「それは君がしたいだけでしょ!」
「バレたか」
「うわぁ、綺麗。あ、見て! 桜の花びらが入ってきたよ!」
「本当だ。あ、髪にもいっぱいついてるじゃん」
「んー、くすぐったい」
「じっとしてろって。桜が取れないだろ」
「はーい」
「よし取れた」
「部屋が桜でいっぱいになっちゃったね」
「気にすんなって。後で掃除すればいいんだから」
「・・・ちゃんと掃除するの?」
「するする」
「よし!」
「俺は犬扱いかよ!」
「光ちゃんに会えて私は幸せだよ」
凛の真っ白な顔にふわりと笑顔が浮かんだ。
「急にどうしたんだよ?」
「えへへ。ちょっと恋愛小説的なことを言ってみたかったのだ!」
胸を張ろうとしてベッドが少し揺れた。
「何だそれ」
凛は顔を少し歪ませて言った。
「ね、手・・・握って」
管のついた白く細い手に光輝の手が重なった。
「あったかいね」
「体温は高めだから」
「そうだ! ねえ、もし子供が生まれるとしたら女の子と男の子どっちがいい?」
凛はクスクスといたずらな笑みを浮かべて言った。
「女の子がいいな。凛に似た可愛い女の子」
「なるほどなるほど。じゃあ! 結果発表! ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル・・・デデン!」
「まだ、妊娠してません!」
「やかましいわ!」
「えー、もっと反応してくれてもいいのに~」
「つまんない男ですいませんねー」
相変わらずのいたずらな笑みを浮かべて凛は言った。
「いいよ。私はつまらない光ちゃんが好きだから」
「はいはい」
凛は心電図を眺めた。
「ねえねえ、私のこと好き?」
凛は心電図から目を離し、笑みを浮かべながら聞いた。
「もちろん! 俺が世界で一番愛してるのは凛だよ」
光輝もまた、笑顔で答えた。
「じゃあ、誓いのキスしてよ」
「喜んで」
凛の血色の薄い唇に光輝の唇が重なって、離れた。
「私は光ちゃんの優しいところが好きだよ」