ないぞうだった
すみません、結構大幅に修正しました。
なるべく無いようにしますが、多分これからも修正入ると思いますので、そういうのがイヤな方は完結後に読むことをオススメします。
時刻は午前4時過ぎ。
橙は残りの時間が少ないことを理解してか、早口で喋り始める。
『言いたいことはいろいろあるけど、良いか?
私と藍くんが友達だってことは、スレの住人たちには絶対に言うなよ?』
「え、な、なんで……」
『出来すぎていて、ネタかと思われる。
全員で油女様に立ち向かわないと24時間後には全員隠される現状では、致命的なことになりかねない』
成程、確かに。
藍は考えた。
もともと釣りとも疑われているこのスレで、『実は俺とアイツが友達で、アイツが今死にそうなんだ!』なんて他の人たちに伝えても。
『いやいくらなんでも有り得ないでしょう、ああ、さてはこのスレが壮大なネタスレだったのか』と思われるのが関の山だ。
多分藍でもそう思う。
……いや、それよりも。
もっと聞き捨てならない言葉が聞こえた。
「隠される?
ど、どういう意味だよ」
『どういう意味も、そのまんまの意味だよ。
古文だと、隠れる。
まあ普通は高貴な人に使う言葉だから、どっちかって言うと『神隠し』とかの方が近いのかな』
「……あ」
そこで藍はやっと、自分がしたことの恐ろしさに気がついた。
一体、何をした?
①「油女様、お隠しください」と3回唱える
②台の上で30秒くねくね踊る
おいおい、これって、もしかしなくても……。
『『油女様、私をお隠しください』……。
『生け贄にしてください』ってことだよ。
いや、流石にこれくらいは他の人たちも気付いてると思うぞ?』
どうやら藍以外のメンツは、分かってて儀式を実行したらしい。
オカルト板のアンダーグラウンドっぷりに、藍は目眩を覚えていた。
「あ、い、いや、ちょっと待てよ?
油女様って、でっかいんだろ?
ドアの前に立つことなんかできるのか?」
『うん、そうなんだよな。
そこは私も疑問に思った。
だから、実況するわ』
「……は?」
『油女様の本当の姿形を、ネットに書きこむ。
多分、何かのヒントになると思う』
藍がスレを確認すると、いつの間にか>2が書き込みをしていた。
自分のところに油女様が来ているっぽいから確認してみる、多分死ぬと思う、といった内容で。
電話をかけながら文章を書きこむなんて、なんとも器用な真似をする。
スレの住人は燃料の投下に大盛り上がりだ。
いやいやいや、と藍は考えた。
「ちょっと待てよ、確かにヒントになるかも知れないが……逃げれば良いだろ、お前!」
『無理だ、分かるんだよ』
橙の声は、震えていた。
心の底から怯えている声、だった。
『扉越しでも、ビンビン感じる。
絶対に逃げられない。
これ、触っちゃダメなヤツだったんだ!』
電話から聞こえていたヌラヌラと這いずるような音は、ビタンビタンと餅の塊を壁に叩き付けるような音に変わっていた。
怒っている。
藍も橙も、そう感じていた。
『あと、最後に言っておく。
隠される順番は、多分、儀式を終えた順……。
良かったな、藍くん、君は、6番目だ。
……できれば、生き残ってくれよ?
んじゃ、電話、切るぜ』
「ちょ、おい!」
電話は、一方的に切れた。
かけ直そうとして、藍は思い止まる。
彼は今、携帯電話から掲示板に書き込もうとしているはずであり。
それを邪魔してしまえば、得られたはずの貴重な情報が手に入らなくなる……。
「くそ、頼む、無事でいろよ、橙……書き込んでくれ、何でも良いから……」
掲示板の更新ボタンをクリックしながら、藍はそんな言葉を呟く。
果たして願いは届いたのか、ついに橙の書き込みが現れる。
藍は、息を飲んだ。
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359 本当にあった怖い名無し 2018/08/※(※) 04:21:41.41 ID:dAi02Dai
ないぞうだった
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……彼が書いたとは思えない、意味不明で、切羽詰まった文章。
何かを察したかのように、藍は髪を掻きむしる。
……そして、これが、このスレにおける。
>2の……最後の書き込みとなった。