スライムのジレンマ
スライムは寂しいのだ。
孤独に耐えられず、彼らは仲間と身を寄せる。
そして触れたところから混じり合い、やがて一つに融合する。
また一匹になって、また寂しくなる。
彼らは他の温もりを求めて、時には人にも身を寄せる。
皮肉にも、彼らの体は人体には有害だ。
皮を溶かし、肉を溶かし、最後には骨だけにしてしまう。
人の骨だけで満足できるなら、そこらの石ころや棒で充分のはず。
しかし、そんな無機物を至極大事に抱えるスライムなど、誰も見たことないだろう。
彼らは骨を捨て、新たな温もりを求めて這い回る。
そしてまた、誰かが飲み込まれる。
彼らに悪意は無い。
ただ寂しいのだ。
人を飲み、わずかに得られる温もりだけが彼らの心を慰める。
人が溶けて再び一匹になった時、孤独の揺り起こしは以前にも増して、彼らの心を寒からしめる。
彼らはスライムであり続ける限り、穴を掘っては埋めるような責め苦を受け続ける。
何故に彼らはこのような罰を受けることになったのだろうか。
私の知る、人の歴史にはそれに答える手掛かりはない。
彼らはいつ、どうすれば、その罪を償えるのか。
それも私には知る術がない。
私はただ祈るばかりである。
いつの日か、彼らの心から孤独が取り払われ、永遠の癒しを得んことを―――。