2「変異」
それは、僕がロンドンの変わり果てた姿に愕然としている最中だった。
「――っ!?」
突然、世界が動く。
初めて空間が歪むという現象を体験した。何かこう、体の所々が引っ張られるような、そんな感じだった。
地震とはまた違った、ゆったりとした揺れもあった。
それに耐えられず、僕と莉久はリビングのラグに倒れこんだ。
コンクリートが砕け、鉄骨が軋み、食器や硝子、鏡は次々に割れていく。
その一つ一つの音が、おぞましい生き物の鳴き声のようだった。
僕たちは五感を全て閉ざした。
――――――――
音が止む。
ゆっくりと耳から両手を離すが、やはり何も聞こえない。
目をゆっくり開いた。
そこには、さっきまでの轟音を形で現すように、ぐちゃぐちゃになった家の成れの果ての姿が――
「……?」
――というのは全く無く、変わらない家の内装がある。
唯一変わったのは、TVに砂嵐が流されていることだけだ。
雑音に混じって、声が聞こえてきた。
「――れでーーえる――――な?」
「い――ら――くやれ」
「おりゃ――いっ――ん〜おっけいっ!」
男と女の声だ。
いつの間にか莉久も起きていて、一緒になってTVを観ていた。
だがしかし、その声はTVから聞こえてくるものではない。
脳内がパニックになりつつ、とりあえず莉久に声を掛けようとしたとき……
……TVの液晶に、一人の少女が映し出された。
黒地のパーカーで、フードを被った少女だ。
赤と青のオッドアイで、中学生くらいの身長だろう。何を考えてるか、全く分からないタイプの奴の顔をしている。
にしてもこの少女、どこかで……
「コホン、えー私の名前はミラ。今直接皆の心に話しかけてる感じかな。トウキョウにいた貴方達をこの世界に連れてきた張本人でーす。まぁルールだけざっくり説明するねっ」
東京にいる全ての人々が、この放送を観ている。
「一つ、貴方達がいるエリアは現在脱出不可能です」
ある人は、渋谷スクランブル交差点前のQFRONTビルの大型ビジョンで。
「二つ、このゲームは、貴方達しかプレイできません」
ある人は、東京ドーム内のスコアボードで。
「三つ、エリア内の物質は全て異なる物質に置き換えられています」
またある人は、東京スカイツリーの第一展望台のプロジェクターで映す周りの硝子で。
「四つ、通常の食べ物が摂取できなくなりました」
そして、ある人……いや、ある二人は――
「五つ――ゲームをクリアした者は、その人数分だけ何でも願いを叶えて差し上げます」
――マンションの一室の、リビングの前のTVで。
「……ってことで、詳しくは目の前の【メニュー】の説明書を見てねー」
目の前に【メニュー】と思わしき板状の物が浮かんでいた。
幾つかの項目の中で、僕は何となくその内の一つに触れてみる。
すると、滑らかに話す機械音が流れた。
『チュートリアルを始めますか?』
やっと本編に入れそうです。
面白い、続きが見たいと思ったら、ぜひぜひ評価、ブックマーク登録お願いします!
ちょこちょこ変な所もあるかもしれませんが、ミスじゃあないですよー。
変えてるとこは全部わざとなんで。
その辺も段々分かってくるので、楽しみにして頂けたらなーと思っています。
不定期な更新ですが、何卒よろしくお願いします!