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23/森の調査


 薬草園の被害がなくなり、順調に栽培が進んでいる。

 お陰様で、水薬の材料にも困らなくなった。


 個数制限はあるものの、冒険者ギルドでも卸売の希望があるため、水薬作成で大忙しな日々。


 となると、下準備だけでもやってもらったり、水薬を瓶詰めしたりと仕事がたくさんある。

 子供達に手伝ってもらってるけれど、それでは足らないのでウォードやジャスさんにも手伝ってもらう。


 もちろん二人共バイト扱いなので賃金を出してます。

 それに、ジャスさんが一緒だからか、子供達もどこか楽しそう。


(うん。効率も上がるし良いアイディアだったわ)


 横目で見つつ、私も梱包を進めていると、ノックが響く。


「はい?」

「シアさん、お客様です」


 ヴィオラさんの声がして、扉が開くと現れたのは彼女とオレンジ髪のクロード様。


「あら、クロード様。……申し訳ありません、ちょっと今ここは作業中で散らかっていて……」


 普段はお茶を飲むスペースだったけれど、この家はそこまで大きくない。

 なので皆で作業が出来るという理由により、今この部屋は作業部屋となっている。


「いや、それは聞いてたんだけれど、ちょっと急用だから無理いって通してもらったんだ。

 だから気にしないで」

「そうですか……?」


 とはいえ、ここで立ち話というわけにもいかないし……。


 どうしようかと迷っていると、ウォードがテキパキ子供達に軽く片付けを指示して、テーブルの用意をし始めた。

 あれよあれよと言う間に、お茶まで準備されるいく。


「ではこちらでどうぞ。我々は一度部屋の外に出ていますので」

「ありがとう、皆」


 お礼を言ってから、クロード様に席を勧める。


「ありがとう。――それで早速で申し訳ないんだけれど、用件を話しても良いかな」

「はい、構いません」

「最近薬草の品薄について、シアちゃん達のお陰でどうにか改善の目処がついたし、一応他の開拓村でも栽培を始めてる。

 だが、そもそもの原因が分かっていない」


 確かにはっきりとした原因は分かっていない。

 可能性としては、馬車が横転した事で魔石が散らばったのが原因だとは思うけれど……。


 それで活性化した魔物に、動物や魔物が傷を癒やす目的で薬草を齧ったというのが今のところ通説になっていると聞いている。


「魔石が原因っていうのは確かにありえるとは思うんだけれど、どうにも違う気がするんだよな」

「そうなんですか?」

「この領じゃ、魔物が活性化すること自体は割とある事なんだ。

 だけれど、こんな風に薬草が不足することは今までなかった」

「……そうだとすると、少し怖いですね」


 何が起きているか分からないというのは、怖い。

 予想外の事態になっている可能性だってある。


 私の言葉に、クロード様も頷く。


「そう。だから調査隊を何回か派遣してるし、冒険者ギルドにも依頼をしてるんだが、こういう時の情報は複数あった方が良い。

 それで、シアちゃんにも依頼を出したいんだ」

「……と言っても、すでに冒険者や騎士団が調査してるんですよね?」


 地元民というほど長くここに住んでもおらず、開拓領の森にも私はそこまで詳しくない。

 情報が複数あった方が良いのは確かだろうけれど、お役に立てるだろうか。


「シアちゃんなら他の冒険者や騎士団とは違う視点で、何か情報を得られるんじゃないかなって期待してるよ。

 薬草に関しても詳しいし……それに、この間ノームと契約したんだろう?」


 そう言って確認するように問いかける。


 確かに、先日の薬草畑の不届き者を捕まえた後、ノームさんから契約を持ちかけられ、交わした。

 もともとそのつもりだったらしいのだけれど、ちゃんと畑を守れるかどうかをテストにしたらしい。


 確かによく考えてみたら、早めに収穫したほうが良いよとかヒントをもらっていた。


 ウンディーネの時と同じ様に、彼からは”悠久の黄水晶”という素材をもらっている。

 今度これを何かに加工しなければ――というのが今の楽しみであり、私の悩み。


 確かに森の中の事なら、植物の精霊か土の精霊に聞くのが一番かもしれない。


「――そう、ですね。お役に立てるか少し不安ですが、それでも良ければお受けします」

「良かった」


 嬉しそうに微笑むクロード様。


「あ、でもノームなら、森に行かなくても異変が分かったりするかい?」

「多分無理だと思います」


 クロード様の言葉にすぐに首を横に振る。

 以前ウンディーネに聞いたけれど、彼女たちにも縄張りというか住処があると言っていた。


 自分の住処にしている場所であれば、遠く離れていても知覚出来るのだけれども、そうでない場所はその場に行かねばならないという。


 そう伝えると、クロード様も残念そうに苦笑した。


 やはり現地での調査をしたほうが確実だと私も思う。


「――えぇと、その場合どういう日程になるんでしょうか。同行者とか」

「とりあえず同行者は俺がまず一人。

 後はシアちゃんが選んでくれてもいいし、俺が騎士団から数人連れてきても良い。

 日付事態は同行者が決定してからになると思うよ。出来れば奥地まで覗いておきたいから、一泊すると思う」

「奥地ですか……」


 この間ノームさんと出会った辺りが、確か中層のはず。

 とすると、当然そこよりも奥。確かにその距離を一日で調査しながら踏破するのは厳しいだろう。


 その場合必要なのは、野営道具と食料。万が一に備え少し多めに。

 それから、水薬などの怪我の備えに――


「拙かった?」

「いえ、問題ないです。お店は締めますし、いつもお世話になってるので役に立てる事であればお手伝いします」

「そっか。――そうそう、一泊するから同行者には女性を……っていっても一人しかいないか」


 言って苦笑する。


 確かに。私の交友範囲で女性かつ森歩きを了承してくれる人は一人しか居ない。

 万が一を考慮すると、戦えない人を連れて行く訳にはいかないもの。


(私自身がそこまで強くないし)


 足手まといは一人でも減らす方が良い。

 避けるのだけなら、割と自信があるのだけれど。


「それならやっぱり、いつもの面々が一番ですね」

「まぁ、そうだね。下手に他人を混ぜるよりは慣れた人間同士の方が良いだろう」


 ならば、やはりメンバーとしては、オズちゃん、ジャスさん、ウォードが一番だと思う。

 オズちゃんは魔法が使え、ジャスさんは森に詳しくて、ウォードは戦闘能力に秀でている。


 クロード様とウォードの二人がいれば、前衛は問題ないだろう。


 同行者を思い浮かべて、名前を順繰りに上げていく。


「――ジャスも来るのかい?」

「はい。森の調査なら頼りになると思います」


 少し意外そうに言うクロード様に自信を持って言う。


「サージュ殿から許可は取れそう?」

「クロード様からの依頼ですし、多分お師匠様も許可を下さると思います」

「なら、頼りにさせてもらおうか。

 シアちゃんがそれだけ豪語するなら、事実役に立つんだろうし」

「えぇ、もちろんです」


 ジャスさんが森歩きで役に立つことは以前の採取で実証済み。

 有能であることを、クロード様にアピール出来れば、依頼という形で彼がお仕事を貰えるかもしれない。


(私から何かするのは、ジャスさんも遠慮するかもしれないけれど、こういう縁でならば多分大丈夫よね?)


 そうと決まれば話は早い。

 私はクロード様に断ってから、まずはウォードとジャスさんに今回の依頼の話をしに向かった。



お読み頂きありがとうございます。

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 こちら『悪役令嬢転生物語~魅了能力なんて呪いはいりません!~』にて新連載を始めました。
 ゲームの悪役キャラ憑依物です。よろしければ、目を通してやって下さい。
 ……感想や、評価に飢えているので、何卒お願い致します。m(_ _)m
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