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16/子供たちについての話し合い



 今日は話し合いの日。


 話し合いの内容は、クロード様からの提案で子供達についてらしい。

 私の保護者としてお師匠様も同席してくれているので、三人で行う予定だ。


 正直少々緊張している。


 まだノームさんへの防虫剤の準備も途中だし、出来れば私抜きでも……。


(でも、今回の子供達の教育は私が主導で行ってるんだものね……うぅ。なんか胃が痛い)


 私が緊張してるのに気づいたのだろう。

 クロード様とお師匠様が苦笑してこちらを見ている。


「暗い話をするわけじゃないから、別にそこまで緊張する必要はないよ、シアちゃん」

「そ、それはそうなんですけど……」


 前もって聞かされてる内容としては、それなりに重要な話だからちゃんと落ち着いて話したいと聞いている。

 その上、お師匠様も同席出来るならという希望まで出てるのだ。

 緊張しないわけがない。


「はぁ……お茶入れてあげるから、そこで座ってなさい」


 ため息を付いたお師匠様が席を立つ。

 少し立つといい匂いが漂ってきた。

 精神を落ち着かせる効果のあるハーブティだと思う。


 ことんことんと、私やクロード様の前にハーブティが置かれる。


 お師匠様は視線で「飲め」と言いたそう。


 苦笑しながらカップを持って一口頂く。


「――さて。シアが落ち着きを取り戻したところで、早速話を始めましょうか」


 私の隣に座ってお師匠様が言う。

 クロード様も頷いて、口を開いた。


「まず、子供達の教育についてなんだけど――」


 木本の事を始めとした、私達が行っている教育について彼は話し始める。


 ――といっても、問題があるよという内容ではなくて、基本的にお褒めの言葉だった。

 特に木本や絵合わせは、領地の孤児院でも導入した所成果が上がっていると言う。


 思わず頬が緩む。

 皆で考えて、悩んで、手探りで頑張ったせいかを褒められたんだもの。


「――そんな訳で、成果が出すぎてるんだ」

「……出すぎている?」


 彼の言葉に首を傾げる。

 成果を出すために頑張ってきたので、「やりすぎ」というニュアンスで言われるとは思わなかった。


 横にいるお師匠様は、何のことか分かるらしくて「なるほどね」と頷いている。


「えっと……ごめんなさい。意味が良く分からないのですが……」


 私が困ったように言うとクロード様は苦笑しながら答えてくれた。


 要約すると外聞がよろしくない、という事。


 現在、私は教育を与えてはいるけど、彼等から一切の対価を貰っていない。

 彼等自身に収入があまりないと言えばないけど、最近は冒険者ギルドでのバイトがある。

 そこで金銭を得ているけど、それはジャスさんへの借金返済や、食費に当てられているので、私に支払われることはない。


 そうなると、ここでは無償で教育を与えているという事になってしまう。


 特に最近は彼等が日に日に健康的になっている。

 さらには、冒険者ギルドのバイトのせいか、計算や文字が読めるのも評判になっているらしい。


 一応予定では、お店を開いてそこで働いて貰うつもりではあったけど、今はまだ開店すらしていないのでそれも無理。


「だから、このままだと何かしら厄介な事になると思うよ。

 それが子供達や君への嫌がらせか、自分の子供にも教育をしろっていう無茶振りになるかは分からないけどね」

「まぁ、あり得るでしょうね」


 お師匠様もため息を付きながら同意する。


(そんな事言われても……)


 自分への嫌がらせなら、対処すれば良い。

 でも子供達への嫌がらせは、絶対にさせたくない。


 教育についても、無制限に受け入れるのはまず無理だ。

 人手の問題もあるし、そもそも子供達が嫌がりそうだし。


「……どうしたら……」


 ぽつりと心の声が溢れる。


「簡単よ。無償だから悪いなら、ちゃんと対価を貰えばいいの」

「でも、まだお店開いてないから、やって貰いたい事がありません……」

「採取……は流石に子供を外に出すのはちょっと問題だもんな」


 確かに採取をしてもらえれば、私は助かるしわかりやすい対価だとは思う。

 思うけど、クロード様が行った通り、引率なしに外に出るのは危険だ。


「シア、貴女何かしてもらいたい事とかないの?」


 錬金術の素材の下拵えは、誰かに手伝ってもらうと捗る。

 でも毎日必要な事じゃないし、旗から見て対価と取れる程の労働でもない。


 他にやってもらいたいこと……。


 ふとこの間帰り道で考えたことを思い出す。


「しいていうなら……農作業ですか……ね?」

「農作業?」


 私の発言を、眉をひそめてオウム返しに言うお師匠様。


「何を作りたいの?」

「いえ、最近薬草が品薄みたいなので、それを育てられたらいいなぁって……。

 問題は土地がないし、そもそも素人なので薬草を栽培出来るか怪しいんですけど……」

「なるほどねぇ……」


 栽培の問題事態は、ある程度は錬金術で補助出来るかもしれない。

 肥料やら、防虫剤なら意味はあると思うし。


 でも問題は土地。


 プランターで作ったりする分なら、今からでも出来るけど労働というほどにはならない。

 かと言って、ただの一般人が自由に畑を作れるような土地を持てるわけもなく。


(森の中で勝手に栽培というのもねぇ……)


 ノームさんみたいに、森の中で栽培をする事は出来ない事もないだろう。

 問題は、子供達に手伝ってもらうには危険過ぎる事と、他の人に奪われる可能性がある事だ。


「薬草畑……ね。

 それって、簡単に育てられる物なのかい?」

「えっと……先程も言った通り、素人なので絶対とは言えないかと。

 ただ、知り合いというか精霊さんが育ててたので、育て方を教えてもらえば可能ではないでしょうか」

「知り合いの精霊……?

 ――いや、今は置いておこう。それで、どれくらいの土地が欲しいの?」

「そう……ですね……。

 対価としての労働だと、周囲に分かってもらわないといけないんですよね?

 その場合は、ある程度の広さが必要だと思いますけど……ちょっとはっきりとは答えられません」

「――ふむ」


 質問に答えると、クロード様は黙って考え始めた。


「ところでシア、今薬草って品薄なの?」

「はい。この間の魔石事件のせいか、森の中であまり採取できなくって」

「あらそうなの?」

「お師匠様の方では問題なかったんですか?」

「そうね。特に問題なかったわ。

 一応もともと人が寄り付かない場所選んでるし、簡単な結界もあるから多分影響がなかったのね」

「あぁ、なるほど」

「――なんか、すごい言葉が聞こえたんだけど」


 クロード様が苦笑いをしながら言う。


「気にしちゃ駄目よ?」

「……えぇ。親父からもそう言われてますので、言及はしません」


 なんだかクロード様の目線が泳いでいる気がする。

 冒険者ギルドの時みたいに、何かしらあったのだろうか。


(……聞かないでおこう……)


 こほんとクロード様が咳払い。

 その後、にっと笑ってから彼は言った。


「条件が色々付くかもしれないけど、畑用意出来るかも知れないよ。

 ――どうする?」

「詳しくお聞かせ下さい」



お読み頂き有難うございました。

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 こちら『悪役令嬢転生物語~魅了能力なんて呪いはいりません!~』にて新連載を始めました。
 ゲームの悪役キャラ憑依物です。よろしければ、目を通してやって下さい。
 ……感想や、評価に飢えているので、何卒お願い致します。m(_ _)m
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