ハロー!ギルドワールド
あと一話で百話ですよ!!
目を開けるとそこに広がっていたのは草原だった。わぉ、綺麗だな。まるで始まりの街の周辺の様だ。
…それにしても本当に何も無いな。森がある訳でもないし、山がある訳でもない。モンスターだって居ないし、俺たちを除いた他のプレイヤーが居る訳でもない。
改めて、本当に俺たちしか居ないのだということを分からさせられた気分だ。少しもの寂しさすら感じる気がしてきた。
「皆様、もう一度ギルドワールドをタッチする事で、何やら情報が手に入る様ですよ」
何も無さすぎて逆に何をすれば分からなくなってきていた俺たちに光を与えてくれたのは、最早このギルドのブレインとも言いたくなる程有能(ネーミングセンスは無い)な冥途だった。
何、まだ情報は隠されていたのか?というか、変な所で運営は不親切だよな。普段は丁寧なのに。
どことなく、何が間違って居るのかを教えて貰って気付くのではなく、自分で調べて気づいて欲しいと考えている教師みたいな感じがするな。
…分かり辛過ぎる例えですまん。何となくそんな気がしたんだ。運営側としても出来るだけ自分で気づいて欲しいのかもしれない。飽くまでも推測だけどな。
まぁいい。取り敢えずタッチだ。ポチッとな。
…タッチしてみると、そこには様々な情報が表示されていた。ここでのやれる事や元の世界への帰り方などなど、中々に重要なものだ。
その中でも俺たちが一番目を引いたのは……
「ギルドハウスの建設ですか」
ルゥが呟くように言った。そう、ギルドハウスだ。どうやらこの何も無い空間に、俺たちの為の家が建てられるらしい。
そのギルドハウスを建てるためには、素材を集める必要があり、その素材はモンスターがドロップするようになっているらしい。
そしてその素材を集めると、ギルハウスを建ててくれるのが……
「あちしって訳!!」
そう、彼女だ。一人称が『あちし』という不思議な彼女は、実はとても小さい。なんと驚きの手のひらに乗るレベルだ。ハムスターかな?
「むぅ……あちしは妖精だよっ!ハムスターじゃないよ!!」
「はわわわわわ!!可愛いですぅ!」
「小さくて可愛いですね!わたしより小さいです!!」
エミリーとルゥはその可愛さにやられてしまったようだ。恐るべし、妖精。ちなみに、彼女はこのギルドワールド専属の妖精らしい。そしてそれぞれのギルドワールドにつき一人の妖精がいるらしい。
「名前はピィだよ!よろしくっ!」
「ピィちゃんかぁ」
「可愛いですぅ」
確かに可愛いな。でもこんなに小さな妖精がどうやってギルドハウスを建てるのだろうか。小さなころに聞いたことのある物語には、おじいちゃんが眠っている間に沢山の小人がやってきて靴を完成させるというものがあった。
あれに近いものなのかもしれないが、それにしては一人しかいないようだし、そもそも物語とは違って作る物は家だ。掛かる労力が天と地の差、月と鼈ぐらいある。こんな小さな身体でできるとは到底思えない。いったいどうするのだろうか。まぁ、本人ができると言っている以上信じるしかないのだが。
「わたくしに似合う様な立派なギルドハウスを作るのですわ!オーホッホッホッホ!!」
ローラもかなり張り切ってきているようだ……そうだ、素材を持ってこないといけないのは分かったし、その素材を持ってきたら妖精のピィちゃんがギルドハウスを作ってくれるのはよく分かった。でも完成したギルドハウスは一体どんな形になるのだろうか。無いとは思うが、いざ完成したらとんでもなくクソみたいなギルドハウスが出来上がっていたら嫌だからな。
それについてピィちゃんに尋ねてみると彼女はニカッっと笑って、どこからか大きな画用紙と色鉛筆を取り出した。
「これでデザインを描いてもらうよっ!」
おいおい、まじか。