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ネーミングセンスは普段の行いと比例しない

「はい、私たち冒険者ギルドは貴方達の個人ギルド創立を認証します。そして、これはこの世界において本当に久方ぶりの出来事なりますね。大変な快挙です、おめでとうございます」


 そう言って、受付嬢さんは俺たちに設立用紙を返却してくれた。そう、あの後俺たちは話をまとめ、個人ギルド設立まで無事に話を漕ぎ着けたのだ。


「それで、個人ギルドの名前はどうなさいますか?今は一つしか存在しておりませんが、次元人の方々が今後手に入れる可能性も十分有り得ます。いや、既に手に入れているかもしれませんからね。名前が無いと区別出来ませんので、よろしくお願いします」


 ……!!


 場の空気が凍りついた。いや、そう錯覚しただけなのだが、その一瞬、その場にいた者は皆そう感じただろう。


 俺たちは全くもって考えていなかったのだ。個人ギルドの創立に、名前が必要になる可能性というものを。


 俺が横に居る彼らに視線を向けると、彼らも俺と同じく少し恐ろしい顔をしていた。


 …名前。それはそのモノの正体を皆にとってわかりやすく説明するためのものである。人間でなら、それにより男の子であったり女の子であったりというのが、会わなくとも分かるようになっている。


 まさにその存在を示すシンボルなのだ。それがヘンテコなモノであれば、周りからヘンテコな印象として捕えられてしまっても仕方の無いほどに。


 であればこそ!自分の所属するギルドの名前は自分で決めたくなってしまうのが世の常、人間の性というものッ!!

 如何にして自らの意見を通すのか! もう既に戦争は始まっているのだッ!!


「そうですね、名前をどう決めましょうか?」


 先ずはルゥの軽いジャブ!!この神の一手により皆、自分が名前を決めたいと言い出しづらくなってしまった!!!

 仮にここで自分が名前を決めたいと出しゃばってしまった場合!!厚かましくも図々しいという印象が当たりな広がってしまうッ!!


 なんと恐ろしい。なんという一手。これにはもはや誰も手を出すことが……!!


「あら、でしたらわたくしが決めて差し上げますわ。よろしいですこと?」


 出来たァァァァァ!!!ローラ!ローラだァァァ!!!

 自らを通す事のできる強靭な精神。それでいて提案をしたとしても図々しいと思わせない程の圧倒的気品!


 こ、この一手では、流石に誰も口を出すことがで出来ない……無念だ。


「ローラ様と愉快な仲間たちとかどうですの?」


 す、隙ありぃぃ!!何そのネーミングセンス!?え?なに、そういう系の定番攻めてみたの!?……いや、あのローラの顔を見てみろ!ドヤってるぞ。

 まさか、ガチなのか?あの割と完璧で欠点の無さそうなお嬢様の残念ポイントはここだったのか?


 おいおい、冥途の口元がぴくぴく動いてるぞ。確かに良いセンスだったけどな。


「いえいえ、お嬢様。ここはロバート目にお任せ下さい。この老骨めが素晴らしい名前を決める事と致しますぞ」


 そう言って冥途は一礼した。見た目以外は比較的まともな冥途だからな。きっとまだましな名前を上げてくれるに違いない。


「お嬢様と親衛隊などはどうですかな?」


 駄目でしたぁぁぁ……畜生、このお嬢様あっての冥途だったか。レベルが全然変わってないぞ。こうなったら俺がまともな名前を上げるしかないな。


「そんな名前じゃダメだ!だから、個人ギルドの名前は俺が決めr「はい、承りました」……へ?」


 さぁ、決めてやる!と意気込んだその時、全く意識していなかった受付嬢の声が俺の耳に入った。今、なんて言った?


 混乱しながら後ろを振り向くと、そこにはルゥとエミリーが立っていた。エミリーはオドオド、ルゥはニッコリと笑っているのがとても印象的だった……じゃなくて!え?もしかして決めちゃった?


「はい、しっかりと承りましたよ。個人ギルド、友情の花畑。綺麗な名前ですね」


 ……良い名前だな。うん、なんかしっくり来た。二人が良いネーミングセンスをしてくれていて助かった。俺も勇者軍団とかいう冷静に考えたらヤバい名前を付けそうになってたしな。


 いやあ、良かった良かった。





 ピロン♪



 …ん?




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