認められた時は誰でも嬉しいもの
前回も少し長かったですが、今回はなんと四千字を超えています!!
更にジャンル別日間ランキングで9位にランクインしました!!ありがとうございます!!
2019年5月11日少し読みやすくしました。内容に変更はありません
到着!!無事何事も無く冒険者ギルドに辿り着いた。困ってる幼女を助ける事もなかったし、チャラい男に絡まれる事もなかった。ノーイベントデー。つまり平和だ。やはり何事もないのが一番だな、うんうん。事件なんて必要無いんだ。蝶ネクタイでメガネの少年なんて要らないさ。だって平和だもの。
ギルドのドアを開く。辺りを見渡すと、さっきまで俺に対応してくれていた受付嬢がいた。
「こちらです!シルバーさん!」
少しだけさっきまでよりも距離が近づいた気がする。ギルドの一員になった事も影響してるんだろうな。嬉しい事だな。
そちらに行ってみると、受付嬢さんの他にももう一人カッコいいおじさんがそこにいた。俺が歳を取るとしたらこういう歳の取り方をしたいという見本のようなおじさんだ。いいな。憧れるわ。歳を取ったぶん落ち着きを払っていて、強さというものが滲み出ている。覇気の様なものまで感じる気がする。見たらわかる、強いやつやん!
「あの、こちらのお方はどなたでしょうか?」
「こちらのお方は私と同じ冒険者ギルドの職員であり、元Aランクの冒険者なので、とても強いのですよ。そんなお方が今回シルバーさんの指導をして下さるとのことです。これでシルバーさんもかなり強くなれると思いますよ!」
おお、強い人に指導してもらえるっていうのはかなりうれしい。元Aランク冒険者なんだろ。この世界でも上から数えた方が早い実力者じゃないか。これは俺の最強へのフラグが立ったな。
「儂の名前はエドワードじゃ。次元人の若者よ。お主は大変賢い選択をしたの。最近の若者、いやいつの時代もそうじゃな、若い者は指導を受けるのは恥ずかしいものだと考え、受けないものは多いのじゃ。受けた者に武器を渡すようになってからは少し増えたが、それでも微々たるものなのじゃ。それに「コホン」……おっと、すまんすまん。つい説教臭くなってしまったのじゃ。それでは長話もほどほどに指導の方に入っていこうか。ついてきなさい」
受付嬢さんが入ってきてくれて助かった。話を聞くのは嫌いじゃないけど、俺は指導を受けに来たんだ。長話は今は御免だな。俺はエドワードさんに聞こえないように小さな声で彼女に感謝の気持ちを告げた。
「いえいえ、全然かまいませんよ。それでは私はここらへんでお暇させていただきます。シルバーさん、頑張ってくださいね。辛いかもしれませんが、確実に強くなれますから」
そう言うと、彼女は離れていった。そしてそのままエドワードさんについていくと、広場のような場所に出てきた。
「ここは冒険者ギルドの地下にある訓練場だ。指導の際もここを使うし、冒険者ならいつでも使うことが可能じゃ。もっとも、ここを使っている冒険者などほとんどいないのじゃがな」
なるほど。確かにあたりを見渡してもほとんど人がいない。おかしいな?次元人ならみんな武器が剣なはずなんだし、新しい武器が欲しいならこれを受けるはずなんだけどな。
「なんで次元人もいないんでしょうか?」
「ん?それはだな、お主がここに来るのが遅かったせいじゃな。先程まで結構次元人もいたんじゃぞ。まぁ、それのおかげでお主は指導を独り占めできるのじゃが」
……うん。そういうことらしい。みんな早すぎだろ。ふぅ、ポジティブだ、ポジティブ。エドワードさんの言うとおりだ。マンツーマンで指導が受けられるんだ。どうだ、先に受けたやつらより強くなってやるからな!覚悟しとけよ!
「うむ、それでは指導を始めようか。お主の武器はどうするかの?そのまま剣でも構わんし、他の武器にするなら武器庫に案内するが。試し振りなども構わんぞ。もっとも、杖に関しては持ってすぐ魔法が出るものでも無いから、余程魔法が使いたいものでも無いと難しいが。それに杖を使う魔法使い以外でも、ダンジョンで見つかるスクロールなどを使えば魔法を使える様になるのでそこまで迷わんでも良いがな。勿論魔法は本職には劣るが。それで、どうする?見に行くか?」
俺は剣を使って強くなるつもりだったし、スクロールとやらを手に入れれば剣士でも魔法を使えると知れたのはでかい。やっぱり剣士でいくぜ!世界一の大剣豪になってやる!
「結構です。俺は剣で強くなっていくつもりですので」
「そうか、それならそれでいいのじゃが、どういうスタイルで戦うのじゃ?剣といってもいっぱいある。今お主が持っておるのは、盾を用いて戦うタイプのものじゃし、両手剣で戦うものもいれば、回避中心の双剣で戦う者もおる。どうするのじゃ?」
そこまで考えてなかった。剣で強くなるってぐらいしか決めてなかった。どうしよう。う〜ん……分からん。こういう時はそれぞれの戦い方の長所と短所を聞いてみよう。
「それぞれの戦い方の長所と短所は何ですか?それをどれで戦うかのヒントにしたいなと思いまして」
「なるほど。そういうことなら説明してやろう。なに、迷惑などとは思っておらん。寧ろこういう事を聞いてくる者の方が少なくて残念がっていたところなのじゃ」
そう言ってもらえるとありがたい。気遣いまで出来るってエドワードさん凄いな。
「先ずは今お主がしている戦い方の説明からしよう。その戦い方は剣士として最も安定していて、最も完成しているといえる。多くの剣士がその戦い方をしているのじゃ。長所は、防御と攻撃のどちらもできるという事じゃ。手数もそれなりに多く、状況に応じた対応がしやすい。短所はこれといったものはないな。儂のオススメもこれじゃし、儂はこの戦い方をしておる」
おお、エドワードさんはこの戦い方をしているらしい。安定していて、防御も攻撃もできる。バランス型という事だろう。
「両手剣の戦い方は、分かりやすいぞ。隙を見つけてパワーで叩き潰すのじゃ。長所としては、威力が高いので相手を怯ませたりできるところじゃな。短所はソロでの戦いに向かんという所と、一撃一撃が大振りになるので素早い相手と戦いづらいという所じゃな」
両手剣は思った通りって感じだな。威力を求める浪漫枠だな。
「双剣はじゃな、分かると思うが、相手の攻撃は躱し、手数で攻める戦い方じゃ。長所としては、動きの素早い相手にも対応しやすく、短い時間で攻撃できるという所じゃ。短所は動きを素早くするために、防具を薄くする必要があるので、一撃くらうとなし崩し的にやられてしまう所じゃ。それとあまりにも硬いモンスターなどには幾ら斬りつけたところでダメージが入らない可能性があるという所じゃな。説明は以上じゃ。大事な選択じゃ。ゆっくりと考えてくれて構わんよ」
そう言ってもらえたが、俺はもう説明を聞いた瞬間にこれしかないと思った。俺はチームプレイもいいけど、ある程度ソロプレイもしたいと思ってたんだ。という事は、答えは一つだ。
「俺は今のままいくことにします。という訳で、指導の方よろしくお願いします!!」
「分かった。しっかり指導させてもらう。こちらこそよろしく頼むぞ」
☆☆☆☆☆
俺は先ず剣と盾を構え、エドワードさんの前に立っていた。
「実戦と同じ形で特訓しないといざという時に上手くいかん。という訳で、この形で指導を開始するのじゃ」
なるほど。経験者は語ると言うものだろうか。亀の甲より年の功。こういう話はしっかり聞いとかないと。
「先ずは自分が思うようにその剣を振ってみろ!」
言われるがまま、剣を振ってみる。盾を持っていることでバランスを崩しそうになるが、何とかこらえて剣を振る。上手くいかない。スライムの時は火事場の馬鹿力だったのだろうか。・・・いや、あの時は特に盾なんか構えずに斬りまくってただけな気がするな。振り方も滅茶苦茶だったし。
「ふむ、なるほど。ああ、あまり気にするな。上手く振れなくてもそれが普通なんじゃぞ。逆に最初から振れとったら儂が要らんじゃろうが」
「はは、ありがとうございます」
そこから、エドワードさんの優しくも厳しい俺への剣の指導が始まった。そして剣の振り方を一通り教えられた後は、盾の指導も行ってもらった。戦いの際には攻守一体できないと意味がない。剣を振りながら、エドワードさんの軽い攻撃(俺にとっては結構重い)を盾で受ける特訓も行った。エドワードさんの攻撃を受けるたびに手が痺れる。こんな時はこのゲームがリアルなのが恨めしい。
☆☆☆☆☆
今俺は剣を構えたエドワードさんと向かい合っていた。所謂卒業試験のようなものだ。エドワードさんは歳のせいで今はBランク程の実力しかないと言っていたが、それでも今の俺では全く敵わない実力者だ。
だが、俺はそれでも立ち向かう。先程までとは違い、俺を殺そうとしているかのような目すらしているように思える。
「来い、シルバー!!」
「はい!!うおおおおお!!!!!」
今の俺には小手先の技は必要無い。そもそもそんな小手先の技をエドワードさんに繰り出した所で、通じるはずがないし、それをするという事は今まで熱心に指導して下さったエドワードさんに失礼だ。だから俺は愚直に言われた事を、教わった事を、叩き込まれた事に従う。
エドワードさんの剣が俺に向かって振り下ろされる。ここに来たばかりの俺では到底見切れず、斬り殺されていたであろう一撃だ。刃は潰されているとの事だが、当たれば、打ち所によっては確実に死んでしまうような気がする。
ここで盾の特訓の時に言われた事が頭をよぎった。
「相手の攻撃を受け止めようとするから手が痺れるのじゃ。相手の攻撃は受けなければいい。当てないのではない。受けないのじゃ」
要は受け流せということだ。無理だ。俺はそう思ったが、エドワードさんは俺にできると思っているからこれを俺に教えているのだと思った。そうだ、失望させてはいけない。そう思い、俺の中でも人生トップクラスの集中力を発揮した。その結果がこれだ。
エドワードさんの剣の角度に合わせて盾の角度も調整する。
!?
特訓の時は一度も成功しなかった受け流しが成功した。エドワードさんが驚愕している。受け流すことでできた隙を、突く!
「オラァァァァァァァ!!!!!」
「ふっ、良くやったの。しかし、負けるわけにはいかないのじゃ」
エドワードさんが何かを呟いたかと思うと、気付いた時には形勢は逆転し、俺の首には剣が添えられていた。・・・負けた。しかし落ち込む俺にエドワードさんはこう言った。
「ここまで追い詰められるとは思っていなかったのじゃ。よくやったの、シルバーよ。これでまだレベルが低いのじゃから恐ろしいやつじゃ。Sランク冒険者も夢ではないの」
「うおおおおおお!!ありがとうございます!!エドワードさん!!いや、師匠!!」
俺は今、猛烈に感動している!!師匠に認められたのだ!!もっと強くなる事を今、ここに誓います!!
「し、師匠とな、ふ、ふふ。悪くないの」
しばらく俺は認められた喜びに浸っているのだった。
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