レイドイベントの開始と、ギルドマスターの演説
どうも、三日連続投稿ができている自分に驚いている公爵蜘蛛です。
今回の話は自信があります(特に後半部分)
その分いつもよりも少し長いので、その点をご了承ください
さて、時は流れて大体一ヶ月ぐらい。もうすぐ運営から知らされていた通り、レイドイベントが始まろうとしていた。プレイヤーは徐々にマリンシティへ集まって来ており、彼らは皆が皆ピリピリしていた。
彼らも、初めて行われるレイドイベントに緊張していたのだ。そんな事が行われるとも知らないNPC達も、何処か嫌な雰囲気を感じ取り、不安を募らせていた。
空の雲行きは怪しくなり、風も冷たい。正に嵐の前触れであった……
そんな所に訪れたのは、我らが主人公ことシルバーである。勿論、シルバーの目的もレイドイベントである。報酬が欲しいのは言わずもがなだが、綺麗な街並みを壊させたくないとも考えていた。
如何なる目的を持とうとも、皆の目的は一つ。街の脅威であるモンスターの討伐。ただそれだけである…
ウゥゥゥゥ!!ウゥゥゥゥッッ!!ゥウゥゥウウッッッ!!!
緊迫したサイレンが鳴り響く。それによって街の住人達は混乱に陥りそうになるが、冒険者ギルドのマスターが喝を入れることによって抑え込んだ。
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レイドイベントの開始である。
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さて、サイレンが鳴り響いたが、俺達には詳細が分からない。放送する為の機械とかは発展してないみたいだからな…
それにしても、声を響かせて混乱を鎮めたギルドマスターは化け物だな。どんだけ広いか分かってんのか!と言いたくなってしまう。現実だったら苦情ものだけどな、緊急時だから許されるどころかありがたいぐらいだ。
しかし、一体俺たちはどうすればよいのか。このままじゃ時間が無駄に流れるだけなんだが……!?
そんな事を考え始めていたその時!俺の目の前に、突如としてインフォメーションが表示された。バグかと思ったが、周りを見渡してみると、どうやらプレイヤー全員に起きている事のようで、よくよく見てみると、今から何をすれば良いのか情報が書かれていた。
なになに……『港に向かえ!』……滅茶苦茶シンプルだな!分かりやすくて俺は好きだけれども。
ちなみに不測の事態が起こったら、その時の状況に応じた行動を取らなければならないという、そんな所まで再現されているようで、イベント中になにかが発生してた場合はこのインフォメーションが表示されることになっているらしい。
兎に角、早く移動するとしようか。グダグダしてて取り返しのつかないことに成ったら堪らないからな。そんな後悔はしたくない。
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俺が指定された通りに港に向かうと、そこは沢山の人で溢れていた。勿論、イベントに参加しに来たと思われるプレイヤーが多いが、この町に住んでいる冒険者たちもそれに負けないほどいるんじゃないか?これ。
まぁ、よくよく考えてみると自分たちの街をその街に住んでいる冒険者たちが守ろうとするのは当然なんだけどな。崇高な考えを持っている人でも、合理的な考えを持っている人でも、自分に危険が及ぶ場合は自己防衛することが大切だからな。他人任せなんて駄目。自分たちの身は自分たちで守らないと。
……ってよく見たら少し開けた場所にギルドマスターがいるじゃないか。それに何かを話し始めるようだ。
「冒険者諸君!よくぞこの港へ集まってくれた。私はこの街の冒険者ギルドのマスターだ!君たちは先ほどのサイレンを聞いてここに集まってくれたのだろう!その事実に感謝を述べさせてもらう!ありがとう」
なるほど、俺たちは知らなかったが、先ほどのサイレンには港に集まることを知らせる合図の意図が含まれていたんだな。知らなかった。だからこそ、俺たちプレイヤーにはインフォメーションで知らせてくれたのだろうな。
というか、威厳たっぷりのギルドマスターが格好良すぎるんだが?この前話した時の弱腰のギルドマスターを知っているからこそ、格好よく見えてしまう……これがギャップ萌えか!?
「今、この街にはかつてないほどの脅威が訪れようとしているようだ!幾らいるのか分からないほどのモンスターの大群。そしてなんと、沖合の方でクラーケンの存在が確認された!」
ざわ……ざわ……
『クラーケン』という言葉がギルドマスターから発せられた途端、主に現地人の冒険者たちから動揺した声が聞こえてきた。一部のプレイヤーもざわざわとしている。俺もギルドマスターから貰った図鑑で見たことがあるぞ。たしかとんでもなくやばい奴だったような気が…
「クラーケンといえば伝説級のモンスターだ。この街で生まれ育った者なら一度はおとぎ話で聞いたことがあるだろう。次元人諸君も、名前ぐらいなら聞いたことがあるはずだ」
伝説級。その言葉から発せられる威圧感はとんでもないものだ。俺もゲームの中だが冷や汗すら出てきそうだ。
「その特徴は、とてつもなく巨大なうえ、腕が十本あるイカのようなモンスターだ。幸いなのかは分からないが、イカの様に墨をはいてくる事は無い。さらに、今回確認されたクラーケンは伝説などで描写されているほど大きくないことから、幼生体である可能性が高い!」
幾つか俺たちに有利な情報が出てきたな……しかし、冒険者たちの顔は晴れない。当然だ。伝説級のモンスターは、幾ら幼生体であったとしても、生体ピラミッドで考えると頂点に君臨しているのだ。それを示すように、今回の襲撃も、クラーケンのほかに大量のモンスターがいるわけだからな。
「諸君、君たちは今とんでもない恐怖に襲われているはずだ。それこそ、今すぐここから逃げ出したくなるほどに…」
ギルドマスターはしり込みしている冒険者たちを眺め、しばらく沈黙した後、静かに語り始めた。その声は何故か辺りに響き、気づけばこの場にいる誰もがその言葉に耳を傾けていた。
「しかしだ。今君たちが逃げたらどうなる?君たちは助かるかもしれない。だが、私たちが守るべき一般人はどうなるか分かるか?昨日まで笑顔で挨拶していた隣人は?大好きな酒が飲める酒場のマスターは?可憐な笑顔の少年少女は?」
ギルドマスターが言わなくても分かる事だ。『死』その一文字がだれの頭にも過ぎる。
「ああ、勿論今ここから逃げ出したとしても誰も文句は言わないだろうし、何より私自身が言わせない。次元人でない我々は死んでしまえばそこで終わりだからな。それに、そもそも次元人の諸君はもとより我々とは別世界の民なのだからな。共に戦う義理がないと言われてしまえばそこまでだ」
その言葉に、俺たちが一イベントだと高を括っていた今回の襲撃は、彼らにとってはその根幹を揺るがす事件なのだいうことを再認識させられる。
「だからこそ、ここで私の願いを聞いてくれ!!」
そう言うと、ギルドマスターは勢い良く頭を地につけた。
「無様だと笑ってくれても構わない。プライドは無いのかと見下されても構わない。だから頼む!!この街を守ってくれぇぇぇ!!!!!我々を蹂躙すべくやってきたモンスターたちから!とんでもない力ですべてを破壊すべくやって来るクラーケンから!頼む……お願いだ…」
沈黙が支配する。嵐の前の静けさとでも言いたげに、風や波の音でさえも止んでいる。
「顔を上げてくれよ、マスター。悩んでた俺たちが間違ってたんだ。あんたの言葉で目が覚めた。そうだろみんな!!」
一人の冒険者が、猛き声を上げた。その声をきっかけとして、次々に声が上がっていく。
「ああ、その通りだ。俺たちにも守らせてくれよ、この街を」
「へっ、モンスターの軍勢がなんだ!伝説級が何だってんだよ!そんな奴らに負けてたまるかってんだ!」
「…死んでも、守り抜く」
「人間様の力ってやつをモンスターたちに見せつけてやりましょ!」
誰も、逃げなかった。その時の皆の気持ちは一つだった。その言葉等を受けて、ギルドマスターがゆっくりと顔を上げた。
「ありがとう!!勇気ある冒険者諸君!!君たちはこの街の宝物だ!本当にありがとう…」
そう言ったギルドマスターの目には、透明な宝石が見え隠れしていた…
勇気ある読者諸君、この小説をここまで読んでくれてありがとう…
この小説のブクマや評価をしなくても誰も文句は言わないだろうし、何より、私が言わせない。
だからこそ、私の願いを)ry(長い)
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