VS師匠
なんか目が…疲れてるみたいですね…
喰らえっ!!師匠ッッ!!!
「ふむ、随分と動きが良くなっておるではないか、これは期待できそうだな!!」
師匠が俺の剣を綺麗にいなしながらそう言った。そうは言っているものの、まったく当たる気配がないんだが。極限状態こそ発動してないけど、それ以外は全力で切り掛かっててるんだぜ?
俺はこの世界にやってきて最初の方に師匠と出会った。その頃から師匠はとてつもなく強いということは分かってたし、そこまで辿り着くのもとんでもなく大変だということは分かっていた。
でも、ここまで…ここまで遠いものなのか!師匠の背中は…前戦った時には分からなかった強さというものが師匠にはあった。
そもそも俺の戦い方の基本は、師匠から教わったものだ。俺がどう切り掛かってくるのか、俺がどの様に防御してくるのかという事をしっかり理解されてしまっている。
でも、それでもだ。俺だって同じ条件なんだぜ。俺にだって師匠がどう動いてくるのか分かる。スピードに結構特化している影響なんだろうけど、師匠の動きは結構見えている。
でも届かない。師匠の剣は俺に当たる(ギリギリ盾でガード出来ている)し、俺の剣は師匠に当たらない。受け流しすらさせて貰えない。完全に抑え込まれてる。
師匠はやっぱり凄いや、闘技大会で優勝するぐらい実力を上げてきたのに、その俺を超えている。
でも、でもだ。俺だってな、色々この世界を楽しみながらやってきたんだ。ここいらでいっちょかっこいいとこ魅せつけちゃって良いんじゃないかな?
ちなみに俺はあの時以来師匠と戦った事は無い。そしてスピードに特化してきていることも、オンリーワンスキルを手に入れていたことも伝えていなかった筈だ。ということは、今は押されているが、師匠は俺の微妙な戦闘スタイルの変化は知らないってことだ。
今さっきまでは師匠のことを舐めていたわけじゃないが、どうしても成長した自分を見せたくて盾で受け流そうとする戦い方をしてしまっていた。でも見せるべきはそこじゃなかった。そう、魅せるべきはどう変化したかだったんだ。
先ずは…駆ける!風のように速く!そして、蜂のように刺す!!
…おいおい、蝶の様に舞いが抜けてるって?…うろ覚えだったんだよ、察してくれぇ…
…兎に角、俺は師匠に向かって駆け出した。
「ぬ?先程までと顔が違うな。よし、かかって来い!!シルバー!!」
師匠は俺を受け止める様に構えている。俺はそんな事は無視して正面から思い切り振りかぶって…殴らずに横に勢い良く転がった。
そして、地を蹴る!!狙うは足!足には盾が届き辛く、躱すしかないはずだ。
卑怯?誰もそんな事は思っていない。よくラノベとかでそんな事は卑怯だ!とか言う奴がいるが、この世界は俺たちプレイヤー以外は生きている。命が一つしかない。生きるのに必死なんだ。
そんな彼等には何が何でも生きるというのが基本理念となっている。師匠達は、常に全力だ。
「ぬっ、ぬわーーー!!!」
なんかめっちゃ燃やされててるパパーンみたいな声を上げながら、師匠は俺の攻撃を躱した。
でも躱されるのは分かってた。ここからが勝負だな…
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