デタラメなピエロ
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「もしかして、まだ何か隠してるんじゃないか?」
俺は質問の形を取ってはいたが、ほとんど確信していた。その言葉にオスカーは一瞬驚いた様な顔をしていたが、すぐに素の状態に戻った…素がピエロってのは違和感が満載だが。
「おやおや、これは本当に凄い!誤魔化そうと思いましたがそうは行かなそうですね〜銀の守護者さんはほとんど確信を持っちゃってますよね〜いや〜本当に凄い観察力、そして洞察力です。感動しちゃいましたよ〜」
クルクルと回りながら、俺の考えが的中していた事を肯定するオスカー。一見隙だらけだが、目は相変わらず笑っておらず、しかもまだその何かの正体が掴めていない。これでは襲い掛かるのは賢い判断ではない。
勇者は勇気を持っているだけではなく、しっかりと考え、そして自らの目的を達成する為に戦うものを指すのだ。
何も考えず、勇気のみを持って戦っているものがいたとしたらそれは勇者ではない。ただの蛮勇である。
「しっかし分かったからといえ、どうするんですかね〜?今の所一方的ですよね〜…当たらないですけど」
そう、当たっていない。見た感じ、そして戦って見て分かった事がある。確かにナイフの物量や的確さはかなり厄介だ。それを上手く使って相性を突けばここまで勝ち上がって来られるだろう。
ただ、それだけなのだ。今まで俺が戦ってきた戦士たちと比べて、どう考えてもステータスが足りない。力もない、スピードもない、無い無い尽くしだ。
これなら極限状態を使わずとも接近する事も可能だろう。先程言っていた事を翻す様でちょっとカッコ悪いが、そろそろ反撃に出てもいいだろう。それじゃあ、行くか。
「おや、雰囲気が変わりましたねぇ。これは何か仕掛けてきますか?そういう事なら防がないと〜いけないですよねぇ!!」
そう言いながらナイフを弾幕の様に投げてくる。そして更に危険察知もガンガン鳴っている…が、恐れる事はない。それはもう、見た。
見えないナイフは何故か上からしか飛んで来ない。恐らく透明なナイフというだけで、チートアイテムみたいに空間を超えたりする訳ではないのだろう。
とするとタネは簡単だ。上に投げただけである。恐らく真っ直ぐ投げる事もできるのだろうが、上から投げた方が奇襲できると思ったのだろう。
右に、左に、時には軽く立ち止まり、そして飛び跳ねる。透明なナイフも弾幕も躱せている。躱す躱す躱す躱す躱す躱す躱す躱す!!
もう少し、もう少しだ!届く…届いた!
「喰らえええええええ!!!」
俺の剣がオスカーの体へと吸い込まれていく。ナイフを投げまくっていた硬直か、オスカーは動かない。
そして、当たる瞬間…
笑っていた。オスカーが笑っていた。
プルン!
このリアルなゲームにおいてかなり異質な、それでいて昔に聞いたことがある様な馬鹿げた音がステージに響いた。小さな音だったが、確かに響いていた。
「ザァンネェンンンン!!ミス!ミスが出ましたねぇ!確かに!確かに当たっていましたよ!あなたの攻撃は!でも…ここはゲームなんです。メタルなスライムを攻撃するのとと同じ。あなたの攻撃はミスしたんですよぉ〜!そうだ、ハイ!…反撃ですよ〜」
その言葉に俺は我に返った。何が起こったのかは分からない。俺の剣は確かにオスカーを捉えていたのだが、ダメージが入っていなかった。
そんなことよりも今は兎に角回避しないと、この距離だと、躱せない!
俺は慌てて後ろに跳んだ。ナイフが再び俺を目掛けて飛んでくる。一つ、二つ、三つ…頑張って躱していたのだが、距離、そして先程混乱していたのが影響したのか、俺がどう頑張っても躱せそうにない一撃が飛んできた。
こうなっては仕方ない。俺は盾を構え、受け流『ザクッン!』
そんな理不尽な音が鳴った。俺は錐揉みしながからも、なんとか着地した。盾でガードした筈なのに俺の体力が半分ぐらいになっている。そして俺はそのダメージを受けた原因を知っている。
それは俺も何度か出したことのある、クリティカルヒットだ。しかしそれは普通相手の弱点を捉えた時に発動するものの筈。弱点どころか体にすら当たってないのだが、どうなっているのだろうか?
「おお!?生きている!クリティカルヒットを喰らって生きている!?信じられない!ブラボー!」
やはり偶然出たものではなさそうだ。その証拠にオスカーはそれが当然の事の様に振る舞っている。それに先程の理不尽な程にあり得ない、当たっていたのにダメージの入らないミス。
これらから導き出される答え。
「まさか…クリティカルヒットとミスが自在に出せるのか?」
そんな事はあってはならない。チート、バグ。そんなモノで発生される様な性能じゃないか。
もしかしたら俺の声は少し震えていたかもしれない。否定して欲しい。俺の考え過ぎであって欲しい。
しかし、オスカーは大変嬉しそうなステップを取りながらも、無慈悲にも首を縦に振るのだった。
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