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当日がやってきた

 予定時刻少し前。俺たちは無事集合を果たしていた。ドタキャンとかされなくて良かったと切に思う。勿論、そんな事をする奴らじゃないのは分かっているんだが。


 周りを見渡してみると、他にも様々なプレイヤーたちが各々の仲間たちと集合を果たしているようだ。中には独自のウォーミングアップやイメージトレーニングらしいことをやっている者もいて、大変心強い。


 そしているのはプレイヤーだけではない。師匠が話したのか、それとも独自の情報システムがあるのかは分からないが、現地人も多数集結している。こんなに集まったのは初めてじゃないのか?


「シルバーさん、エミリーちゃん、頑張りましょうね!」

「頑張るでしゅ!……~~ッ!!」


 ルゥとエミリーもやる気は十分みたいだ。エミリーは噛んでしまって、恥ずかしさで顔が真っ赤だけれども、可愛いのでノープロブレムである。一応ルゥと二人で励ましておく。


 そして逆にそれが良いように作用したようで、気付いた時には緊張感がいい感じにほぐれていた。怪我の功名だが、こんなところも俺たちらしくて良いな。


 ……ん?周りの人たちが上を見ているな。何か起きたのだろうか。まさか、もう邪神が復活したとか!?確かに時間的にはそろそろ復活してもおかしくはないが。


 ルゥとエミリーもそう思い至ったのか、二人して上を見始めた。俺も上を見てみよう。……あ、アレは!!


「クックック、ニンゲン共よ。妾は魔王。気軽に魔王ちゃんと呼ぶがいい」


 そこにいたのは、堂々とした佇まいで宙に浮いている魔王ちゃんだった。


 魔王の根城は最近解放されたダンジョンだが、行ったことがある者や、挑戦こそしてなくても情報収集の一環で知っている者が多かったのだろう。ものすごくざわざわとしている。


「……鎮まるがよい!」


 騒々しかったのが煩わしかったのだろう。魔王ちゃんは一喝した。そのカリスマと覇気は、とてもゲームの中だからと無視したり笑ったりすることが出来るものではなかった。


 俺以外の者もそうだったようで、騒がしかったフィールドは瞬く間に静かになり、沈黙が支配するようになった。


 それを確認した魔王ちゃんは満足そうに頷き、そして口を開いた。


「今日の妾は敵ではない。なぁに、敵の敵は味方と言うじゃろ?妾にも彼奴は憎たらしい。諸事情ゆえに直接戦うわけにはいかぬが後方支援は任せるのじゃ」


 魔王ちゃんはきちんと有言実行してくれたようだ。そしてこのサプライズにはみんな盛り上がったようで、魔王ちゃんに再びうるさいと怒られないように、小さい声で話し合っている。


「あとはそうじゃな……えぇい、悩むでない!それでよくニンゲンを導けたもんじゃな!」


 かと思うと、魔王ちゃんは突然誰かと言い争いを始めた。


「もうええじゃろ!……カウントするからそれまでに出てこないとどうなるか分かっとるじゃろうな?3!2!1!はい!」


「も、もう、急かさないでくださいよ!心の準備ってやつが……あ」


 魔王ちゃんがカウントを始めたかと思うと、突如虚空から可愛らしい美少女が現れた。恐らく急かされたからだろう、慌てた様子で出てきた後に、辺りを見渡してフリーズしてしまった。


 ……どこかで聞いたことがあるような声だな。というかこの声の持ち主に俺はすごくお世話になったような気がする。まさか!


「あー……ゴホン、私はアイリス。この世界を導き守護する者。次元人の皆様、そしてこの地に生きる皆様。よくぞ勇気を奮ってここに集ってくださいました」


 あのグダグダした後でキリッとした顔でカッコイイことを言ってもさっきまでのイメージは到底拭いきれるものではないが、今は敢えて置いておこう。


 それよりもだ。今、彼女はとんでもないことを言わなかったか?『アイリス』って言ったよな。俺の聞き間違いじゃないよな?


 ……お、おお、おおおおおおおおお!!このゲームを始めて最初に出会った声だけの天使!その後も何回か声だけしか存在を確認することがなかったあの彼女が!肉体を持って!俺の目の前に君臨している!


「……可愛い。」


 思わず口をついて出てしまったその言葉は、まさか届いたわけではないだろうが、彼女と目を合わせるきっかけとなったのかもしれない。


 アイリスがこちらを見ていた。しかも少し顔を赤らめて。……まさかね。


「……あ、私もこの魔王と同じく皆様をサポートさせていただきます。よろしくお願いしますね」


 とにかく、今の俺に言えることはただ一つ。……このゲームをやってて良かった。

裏話ですが、このイベントは本来もっと先に発生する予定だったものです。よって復活した邪神(激つよ)がこのまま襲い掛かればプレイヤー側の敗北は避けられません。

ですので、このゲームの優秀なAIは、この世界きっての実力者である魔王ちゃんとアイリスをプレイヤー側に付けることでバランスを取ろうとしているわけです。

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