DIEジェストすら短めに
どうも。最近の気温は暑いやら寒いやらで滅茶苦茶ですね
そこからはもうまるで夢だったかと疑ってしまうようなあっという間の出来事だった。……正直言って俺は師匠を舐めていたらしい。
師匠が強いのは分かっていたつもりだった。そう、分かったつもりになっていただけだったのだ。
思えば最初から、師匠をこの魔王の根城に誘った一番の目的は一人で行く不安を軽減するためだった。勿論、戦力として期待もしていたが。
そもそもそれが間違いだった。そして自分の偽物を倒して以降、もともと異常に強かった師匠は覚醒してしまった。
きっと何かのコツを掴んだのだろう。鬼に金棒、師匠に偽物だったのだ。
師匠は何が出てきてもボコボコにしてしまった。俺だって勿論戦ったが、どちらかと言えばそれは『獲物を譲った』感覚に近かったと思う。
師匠に俺の助けなんて要らなかったのだ。師匠が唯一ダンジョンの中でやられたのは、やられたら誰でもブチ切れたくなる本当に理不尽な初見殺しの罠だけだった。
そう、最初に言ったトライアンドエラーは初見殺しの罠を見極める作業のことである。本当にそれ以外では負けなかったのだ。
師匠は強さが求められる純粋な敵なら、まるでスライムのようなザコ敵を倒すが如くけちょんけちょんのボコボコにしたのだ。
さすがにモンスター側が可哀想だと思ったし、師匠のバランスブレイカーぶりに顎があんぐりと開いてしまった。現実なら鼻水も出てたかもしれないな。
もう若い頃の師匠超えたんじゃないかと思って聞いてみると、まさにその通りだったらしい。置いて益々盛んになる。師匠は今も成長期らしい。
恐ろしい話だ。もはや師匠のおじいちゃん要素が自己申告の年齢しか無い。見た目もなんかどんどん若返ってる気がするしな。やべぇ、やべぇよ。
「おい。妾を無視するでない今なら許してやるぞ」
本当に師匠ってやべぇよな。語彙力が無くなってやべぇとしか言えないぐらいやべぇ。
「妾、一応分身と記憶共有してるんじゃぞ?この流れもう一度見てるんじゃが?」
何回だって言うが、本当になんで?と言いたくなる。だって……だって……。
「zzz」
「過去に思いを馳せている最中にゼットゼットゼットやつがおるか!」
そう、勘のいい人ならもうお分かりであろう!!
なんと!なんとなんとなんと!!!もう魔王ちゃんが居る所まで来てるからだ!!驚いた?驚いたよな!
俺だって想定ならもっと苦労すると思ってたし、分身じゃない魔王ちゃんに実際に会うのなんてもっと先だと思ってたよ!!
でもこれが現実だ。……ゲームの中だけどな!!!
「クックック、この妾をツッコミ役に徹させた後に放置とは中々良い身分じゃな、シルバー。……喰らえい!!」
ちょっとおふざけが過ぎたらしい。魔王ちゃんが指にビリビリしている真っ黒なボールの様なものを浮かべ、こちらに向けて放ってきた。
危険察知が軽くしか発動していないため、魔王ちゃん的には本気でこちらを害するつもりはないのだろうが、そのまま喰らうのは癪だし、俺の紙装甲でまともに喰らうとまずいかもしれない。師匠も俺に一任するつもりのようだし、これはしっかりと対処しよう。
躱しに行ってもいいが、ホーミングシステムみたいな小細工が掛かっていた場合にめんどくさいので攻撃をぶつける方向で対処しよう。
魔法なら反射できる『反射する一撃』に頼りたいところでもあるが、それこそさっき言ったみたいに、ホーミングシステムがあった際に裏目に出るかもしれない。
だから……このダンジョンの多種多様なモンスターを倒すことで手に入れた圧倒的ステータスと技術を使う。前までの俺なら無理だったかもしれないが今なら……!!
球状の魔法という大きな点には点で対応する!
「剣突の一撃!!」
イメージは敵の弱点をピンポイントで付くように。頑丈な敵であろうと、それが例え魔法であろうと、そこに大きな違いは無く……仕留める!!
「「うむ、見事!」」
師匠と魔王ちゃんの声が俺の耳に届いた。そしてその言葉が示すように、魔王ちゃんの放った魔法は跡形もなく消失していた。
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