見せ場がないことが悲しいことだと言い切れる……とも限らないだろう
これまでの簡単なあらすじ!
運営が突如発表した最高難易度のダンジョンに挑戦することにしたシルバー。自らの師匠と新たな装備を纏って挑んだシルバーだったが、中々な苦戦を強いられる。
そんな最中、道をふさいでいる爆発する岩を遠くから攻撃したシルバーだったが…?
俺の斬撃が巨大な岩にどんどん近付き、そして激突した。
ドッカーン!!
ありきたりな爆発音を点てて岩が爆発した。……ん?俺のあの攻撃、別に爆発するような効果は無かったと思うんだが。ということは…?
DANGER!!DANGER!!
「来るぞシルバー、気を付けろ!!」
師匠が叫ぶ。俺も身構える。
ボフンッ!!
爆発の中から何かが勢いよく飛び出してきた。……これは!
「ぬぅっ!?」
待ち構えて迎撃する構えを取った俺とは違い、師匠は前へ飛び出し、その剣で飛び出してきた何かを止めた。いや、何かと言うより…。
「「またゴーレムか!」」
そう、またゴーレムだ。いい加減見飽きてしまったゴーレム。まぁ、ここに来る前に俺が鋼鉄のダンジョンに行ったのが悪いのだけれども。
このダンジョンを創った魔王ちゃんはまったく悪くないのだけれども。それでも、それでも…。
「もうお腹いっぱいなんですよ!!」
師匠が受け止めたゴーレムを、俺が後ろからどつく。どつく。どつく。ひたすらインファイト!!うおおおおぉ!!
☆☆☆☆☆
そこから先はもう一方的な展開だった。二対一なので普通に有利だったな。というか特に見せ場も無かったのでカットだカット。え?少し説明が欲しい?……そうだな。
爆発から飛び出してきたゴーレムにビビった人なら、対応に失敗してしまい、そのまま戦線が崩壊してしまうこともあるかもしれないが、俺たちはそうならなかったので、一つ目の難関は簡単に突破。
そして肝心のゴーレムの強さはというと、正直言って前戦った博士の紫色の光を放ったゴーレム……つまり俺の装備の元になったゴーレムと同じくらいだった。
通常の雑魚敵が他のダンジョンの裏ボスに出てくる奴と同じくらいの強さなのは恐れ入ったが、逆に言えばそれぐらいでしかない。
装備を一新してニューシルバーとなったこの俺からすれば大した問題ではないということだ。しかも今回は師匠も一緒だったからな。ゴーレムは見事にスクラップとなった。
というわけで見事に岩をどかしてゴーレムも突破した俺たちは先に進むぞ。まだまだこのダンジョンの奥は深そうだからな。立ち止まっている余裕はない(キラッ)。
☆☆☆☆☆
そのまましばらく警戒しつつも歩いていた俺たちだったが、特に何事も置きることなく、とっても可愛いハート柄のデザインの扉のついている新しい部屋の入口に辿り着いた。
…はいそこ!舌打ちしない。何事もなく通れるのが一番なんだからこれで良かったの!……まぁ、拍子抜けと言われればその通りなんだけどな。
にしてもこの扉のデザインは確実に魔王ちゃんの趣味だろう。
凶悪なダンジョンと呼ばれるこの魔王の根城にその可愛らしいデザインが合っているとは口が裂けても言えないが、魔王ちゃんらしさというモノがこの辺で感じられるのは、何というか微笑ましい。……もしかしてこれが伝説の父性と呼ばれる感情なのか!?
「ふむ、何やら危険な、それでいてここ以外で中々体験できないようなことが体験できるような気がすると儂の勘が囁いておる。この部屋に入る際は気を引き締めるぞ、シルバーよ」
俺が少しバカなことを考えていると、師匠が俺に良く分からない、それでいてどこか具体的な注意を促してきた。
俺の危険察知は今の所何も危険を知らしていないが、長い間様々な敵を倒し、いろいろな所で多種多様な経験を積んできた師匠の注意を鼻で笑うことは俺にはできない。細心の注意を払って入ることにしよう。
「おじゃましまーす…」
小声で挨拶しつつ、扉を少し開けて中の様子を窺うが、今の所危険そうなモンスターやヤバそうな罠のようなものは床だけでなく、壁や天井に至るまで見つからない。
改めて危険察知を確認してみても、特に問題は見つからない。どうやら本当に危険はないらしい。……今のところだけどな。もしかしなくても部屋の中に入り切ったら敵が出てくるタイプなのだろう。
なので師匠と俺が部屋に入ったわけだが、中々モンスターが現れない。俺が今まで見たことがないこのゲームのバグを疑い始めたその時、どこかで見たことがあるような光がこの部屋を包み始めた。
「む、シルバー!儂らは今からどこかに転移させられるようだ!!注意せい!」
そうだ!この光はダンジョンから脱出する際によく見た転移する際に出てくる光!
そこまで師匠の言葉で気づいた俺だったが、当然回避することなどは出来ず、成すすべもなく光とともにこの部屋から姿を消すこととなった。
そして光が収まった時、俺が目を開けるとそこには…。
「俺はシルバーだ。よろしく」
鏡に映ったかのように、全く同じ装備、そして全く同じ顔をした俺が立っていた。……は?
ちなみにですが、自分の想定では今現在この小説は結構な終盤に差し掛かってます。