ちょっと気持ち良い
どうも!!お久しぶりです。世界の覇王から一般人に降格した公爵蜘蛛です。
「うおぉおおおおおおおおおお!!!そこ!そこ!そこ!アチョー!!フゥワチャー!!……ッシャアオリャー!!!」
右から左から、前から後ろから。ドンドンドンドンドン攻撃が降り注いでくる。息を吸うのも惜しい激しい戦い。
これだけ集中することは、そこそこ生きてきた人生の中でも中々ない。だけど少し心地良い。俺も戦士だったという事なのだろうか。
「ふん!」
師匠はとても調子が良さそうだ。一太刀でどんどん敵を薙ぎ倒している。流石俺が居なくても一人でここを突破しただけあるな。とんでもない実力だ。強い。最強だ。
「うき!うきき!!」
このダンジョンにいる猿が何を考えているのかは分からないが、何となく小馬鹿にされているような気がする。
もうとっくに奇襲は失敗していて、猿軍団は壊滅しているというのに。奇襲出来る以外は馬鹿なのかもしれないな。
「オラッ!!」
最後の猿を斬り捨てる。よし、奇襲される事さえ知っていれば問題無く対処出来るな。このままの勢いで進んでいくとしよう。我が刀が血に飢えておるわ…。
☆☆☆☆☆
は、恥ずかし!!何!?「我が刀が血に飢えておるわ…」って!何!?「俺も戦士だったという事なのだろうか」って!完全に黒歴史だ。もうダメだ、おしまいだァ、殺される(社会的な意味で)。
一回目にコテンパンにやられた相手を軽々と倒せたから、嬉しくてテンションが完全におかしくなってしまっていた。
一度冷静になって客観的に俺の言動を見てみると恥ずかしくて堪らないな。みんなはこんな風になっちゃダメだぞ?
「ふむ、そろそろか。シルバーよ、止まれ。儂を殺ったのはあのモンスターである」
歩き続けていると、師匠が俺を静止させ、ある方向を指さした。俺がそちらを見ると、今いる位置からは結構遠くにだが、そこには岩があった。
岩だ。それもとても大きい。神様が引き篭もりそうなぐらい大きな岩だ。……実物を見た事がないから適当だけど。
…というかアレ?行き止まりじゃないか?岩が在るだけで明らかに他に道があるようには見えない。ここまで一本道だったし道を間違えた訳でも無い。という事はもしかして?
「うむ、恐らくあの岩を退けた先に道が在るのだろう。しかしアレを攻撃したら爆発したのだ。儂では到底耐えられぬ火力でな」
酷い初見殺しだな。師匠が引っかかってしまうのも無理のないことだ。誰とは言わないが、このダンジョンを作った奴はきっととんでもなく性格が悪くて「クックック」と笑うような幼女に違いない。
きっとそれを本人に言っても笑って馬鹿にしてくるだけなのだろうけどな。
…っと、それは別にどうでもいいんだ。今は岩について考えよう。というか、もうこんなの答えは一つだろう。
師匠がこんなに遠くで俺を呼び止めた。それから推測できることは…。
「うむ、やってしまえ」
よし、師匠の許可も無事降りたのでやってしまおう。いっちょド派手にやっちまおう。
「切り裂き魔の咆哮!!」
岩へと斬撃が飛んで行く。いつもの同じ技だと思うなかれ、装備も俺自身のレベルも前までとは比べ物にならない。さぁ、砕けろ岩よ。師匠の仇だ……いやまぁ、生きてるんだけどね。