6 いざダンジョンへ!とはいかず……
現界:現代、現実、基本的に皆さんが住んでる世界だと思ってください。
クエストを受注した俺たちはすぐにダンジョンに向かう……というわけにも行かず、戦闘の練習をしていた。
先ほどまでは魔法の練習だったので今度は実際に剣を扱った練習だ。
流石にやったこともないままダンジョンに行くと言うのも危険だろうとのことだ。
俺は剣を抜くと感覚を掴むために軽く振り回す。
予想以上に重く動きが鈍ってしまう。
あぁ、なるほど。
これは確かに練習が必要だな。
近くの岩を相手に俺の知りうる剣技を幾つか試してみた。
すると最後に放った剣技だけが思い通りにすんなり動いてくれた。
軽い!!
なんだこの感覚は。
明らかに今までとは違った。
「軽く振り回してみなさい。
とは言ったけどなんでスキルが使える程にまで成長してんのよ……。」
エリーはこちらを見て呆れていた。
そういえばスキルというのもあったな。
これはスキルのお陰なのか……。
俺はもう一度先ほどの剣技を岩に当てる。
滑らかな剣捌き。
右下から切り上げ、逆に切り下げる。
最後に突きという単純なものではあるが重さが予想以上であったためスキルの力がなかったらこなすのは困難を極めていただろう。
兎にも角にも剣技を扱えるようになった俺はエリーから許可を得てダンジョンに向かうことになった。
さて、剣技を修得してから少し経った頃。
俺たちは先ほど焼滅した林に差し掛かっていた。
素晴らしいくらいに何も無い。
全てが文字通り焼け滅んでいるのだ。
木も跡形もなく生物がいたのかすら分からない。
罪悪感で胸がズキッとする。
もしここに誰かいたとしたら……。
「ここには生体反応はなかったわよ。
安心なさい。あんたは殺してない。」
エリーはまるで俺の心を読んだかのようにそう告げる。
良かった。大丈夫だったみたいだ。
その後エリーは小声で「別に殺したって死にゃしないのに……優しい奴……。」と言っていたのだがそれはシローには届かなかった。
舞台はまた移り林を越えたところにある湖。
河とは比べ物にならないくらいの広さに感嘆の声を漏らす。
しかしこれを迂回するとなると結構しんどそうだ。
「なぁ、これ船とかないの?横断しないと結構きつそうなんだが。」
その辺詳しそうなエリーに聴いた。
まぁ俺に関しては全くの無知だしな。
だがエリーも困った顔を浮かべる。
きっと飛べる彼女にとって船など不要でしかないのであろう。
俺は左手でウィンドウを表示させスキルをタップする。
先ほど確認していたので内容について大体把握済みだ。
下にスクロールすると任意のスキルが見つかったのでそこでスクロールを止める。
スキル名は«造船»。
なぜ習得済になっているのかは不明だがとにかく使えることになっている。
スキル概要を確認すると材料に触れ同意するだけで船になるそうだ。
なんと楽なことか。
そこで俺は湖の近くになっていた大木を剣技スキルで切り倒した。
エリーは驚きの余り空いた口を塞げずにいる。
俺はそのまま流れ作業で木に触れ造船スキル発動に同意する。
すると瞬く間に立派な船が出来上がった。
これには自分でも驚愕の声を漏らさずにはいられない。
エリーも流石に興味が勝ち、
「なんでそんなスキルまで使えるようになってんの……!?
それにこんな立派な船……熟練度も相当高いみたいだし。
この世界には、来たばっかなのよね?」
疑われても仕方ない。
こればっかりは俺も記憶を操作されているのかと疑ってしまう。
先ほど木に触れて分かったが他にも色々と作成出来るらしい。
一体どうなっているのか……。
「多分……そのはずなんだけど……。
年の概念とかが分かれば……。」
そう答えるしかなかった。
だがこの世界にそういった概念がないのは明確である。
理由として時間の概念がないのだ。
何一つとして時計のようなものがない。
昼や夜といった明確なこともわからない。
故に者により休む時が異なるのだ。
「………………まぁいいわ。
シローも困惑してるみたいだし。
それよりこの船で渡るつもりなのね?」
エリーは深追いをしないことで気遣ってくれたのだろう。
冷静で頼りになる娘だった。
俺は渡るつもりかという質問に肯定の意を示し船に乗り込む。
作りは精密で頑丈に出来ている。
サイズは現界にあった漁師の船くらいだろうか。
驚くことにモーターが付いている。
エリーも乗り込んだところで早速発進し始めた。
航海は順調である。
予定と大分変わってしまってすいません!
どうしても入れたい場面がありまして…。
次回戦闘入ります!
ダンジョン名も出ます!
予定はあくまで予定です(