3 さっそくだが魂穢れそうだねっ!
森を抜けたそこは
先ほどまでの印象とは打って変わっての
大きな繁華街!
なんて素晴らしい世界なのだろうか!!
……………………なんて、
そんな淡い夢を抱いていたが見えてきたのは廃墟。
廃墟が並んだ人が住んでるのか怪しい街だった。
しかもその街の前に見えているのは…河。
幅50mはあるだろうか。そう簡単には渡れそうにない急流な河が街への行く手を阻んでいた。
「さ、街が見えたわよ。あんたの装備整えてあげるからさっさと行きましょう?」
そう言って軽々と飛んでみせるエリー。
やはり翼は本物のようだった。
もしかして自分にも生えてるのかと背中をまさぐる。
ない。翼のようなものなどどこにもなかった。
そんな俺の行動見てエリーは呆れたように
「飛べない人はなんとやら、ね。全く……てんでダメね。しょうがないわ、橋を探しましょう。」
エリーは地面に降り立ち、
付いてくるように促した。
飛べる人なんているもんかねぇ……。
しばらくして見えてきたのは橋……
といっても壊れかけの吊り橋であった。
「おい、これは渡れんだろう……?赤ん坊でさえ落ちてしまいそうだぞ?」
本当にそのくらいぼろっぼろなのだ。
縄は切れかかっているし板はヒビだらけ。
落ちたら一溜りもない急流の大河。
俺はさすがに冗談だろう……?と苦笑いする、が。
「何言ってんの?この河、ここ以外に橋なんてないわよ。渡れないのなら泳いで行くの?」
マジでした。はい。
神様ごめんなさい。もう悪いことはしませんので無事渡らせて下さい。
心からそう願えた…………と思う。
吊り橋を渡り始めてどのくらいか。
もう半分はとうに超えていた。
最初は疑っていたが割と揺れもなく、丈夫に出来ていた。
特に危険を感じることなく半分までは来た。
のだが…………。
残り半分のその橋。そこは……無数の穴でできていた。
じゃねーよ!きつくねぇか、さすがに!
そう、今までは板がしっかりしていたのだが。
前を見る限りどの板にも穴、穴、穴。
明らかに殺意が込められていた。
今更引き返せるはずもなく。
俺は仕方なく小鹿のように震えた足を1歩1歩前に出して行ったのだった。
おっ、おっ、おっ……。あと1歩……。
ふーっ。ふーっ。…………
「いや息荒いし変な声出てるしふつーに気持ち悪いんだけど。」
「ひゃんっ!」
………………なんだよ。エリーかよ。
余りに唐突だったもんで変な声出てしまったではないか。
この1歩は大切なんだ。
ここが成功すれば俺は……俺は……。
「あんた……そこは踏まない方がいいよ。
絶対死亡フラグ立ててる。」
立ててないもん。フラグじゃないもん。
そう心の中で呟きながら俺は律儀に最後の板を跨いだ。
街に着くと先ほど見た時の印象とは180°変わってすごく賑やかな街だった。
わいわいがやがやと言ったところだろう。
商業も盛んみたいで市が至る所に開かれている。
ただ、やはり人は殆ど住んでいなかった。
行き交うのは竜人、悪魔、ゴブリンなど、物語上でしか聞いたことのないモノ達だった。
「ここはベルフールの街。
まぁこの辺だと一番賑やかな所ね。
安心なさい。みんな優しい人達よ。」
エリーはなんでもない顔でこう言っている。
事実この場には至極珍しいであろう人の俺が通っても特に何もないからだ。
ただ…………
喧嘩からの殺し合いが至る所で勃発していた。
「あのー、……エリーさんっ……?
すぐそこで殺し合いが行われてるんですけど……。
幻覚ですかね……。」
そこまで数は多くなく被害も大きくないものの本当に殺しあっているのだ。
比喩ではなく。
先ほどゴブリンに喧嘩を売られていた悪魔は首を軽く飛ばしていた。ゴブリンの。
「あー……。この世界来たばっかだとそっか。
この世界はね、死は何よりも軽い。
殺害は何よりも軽い罪で、
死刑は何よりも軽い罰なのよ。
まぁ不死不滅なんて、言うくらいなことはあるわよね。」
は、はぁ……。
魂は穢れてないだなんて言われたけど……
これは確かに半日程度で穢れるだろう……。
俺は橋を渡ったことを後悔するのであった。
ここからペース落ちるかもしれません
すいません!