2 異世界定番の案内役の子
んっ……。
ここは……どこだっけ。
記憶が混乱している……。
どうして寝てたんだ……?
「あっ。やっと覚醒したわね!待っていたのよ!」
駆け寄ってきたのは見た目中学生ぐらいの女の子………………の悪魔。
見る限りだと染めたものとは思えない程に綺麗な金髪のツインテール。
それに透き通った碧眼と、偽物には見えない悪魔の尻尾に翼。
この娘は…………。
「こ、こんな森の中で倒れてたから……し、心配したのよっっ……!」
あぁ、なるほど。
こんな悪魔のような見た目でも中身は少女らしい。
優しい娘だ。
俺は立ち上がると彼女の頭を撫でながらこう言った。
「すまない。ありがとな。こんな優しい娘が居て助かった。良ければ道案内、お願いできるか?」
少女は顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。
何か、変なことをしてしまったか。
謝るべきなのかと必死に思考していると、
「い、いいわっ。道案内……してあげるっ!」
俺として最高の返事を頂けた。
とりあえず、森は抜けれそうだな。
その後のことはその後考えればいい。
「俺はさと……『シロー』だ。よろしく。」
自己紹介をしただけのつもりだったのだが、少女は口をぽかんと開け呆然していた。
何かおかしかったのだろうか……。
名前が変だったのだろうか。
「久しぶりね……。」
少女は小さく何かを口にしたがそれを聞き取ることは出来なかった。
「あまり名乗ることはないんだけど……。
しょうがないから名乗ってあげる。
私の名は『エリー』よ。今日からそう呼ばせてあげるわ。」
そう名乗ったエリーはどこか寂しげで嬉しそうだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ところでエリー。ここはどこなんだ?
正直俺自身来たばっかで帰る場所もないんだ……。」
エリーに道案内をして貰って数十分、俺は率直に聞いてみた。
実際今も向かってる場所は分からないしどうして眠ってしまっていたのかも分からない。
ただ先ほどから周囲で殺意が感じ取れる、くらい。
「そうね、そろそろ説明しておくべきかしら。
魂がこんなに穢れてないって時点でなんとなく来たばっかの人なのかなって気付いてたけど。
………………だからバレなかったわけだし……。」
んっ……?最後の方、何か引っかかるような……。小声だったから良く聞き取れなかったが……。
「とりあえず、この世界のことと、私のことについて、軽く説明しておくわ。」
曰く、この世界の名前は不死不滅の世界というらしい。
曰く、人間の住む現界から見るとここは世界ランク20下、つまり間に19の世界があると。
そしてこの世界は世界ランク最下位であると。
曰く、この世界は名の通り“死なない・死ねない・逃げられない”の三拍子揃った所であると。
そして、【性格】【行動】【殺傷数】で種族と見た目が変わる、ということ。
「ということか。結構物騒な世界だな。
生きていくのも大変そうだ。」
自分が理解した通りに告げ、率直な感想を伝えるとエリーは少し驚いたようだった。
「この世界のことを聞かされてそんなに冷静な人はあんたが初めてよ。シロー……あなた何したの?」
そう、か。
確かに死ねないし逃げられないなんて聞いたら人は発狂しそうなものだ。
事実、俺も発狂寸前までは動揺していた。
まぁ、心臓を自ら一刺しで自決した俺だからな……。
「……なるほどねぇ……。あんたも色々あったんだね。とりあえずもうすぐ森を抜けるわ。そしたら街に行きましょう。そんな裸みたいな装備歩いていたら何回死ぬか分からないですし、ね?」
不敵な笑みを浮かべるエリー。
確かに、これ以上エリーに刺されるのもごめんだな。まぁ、このことは黙っておこうか。言ったらまた刺されそうだし。
そうこうしてると道の奥から光が見えてきていた……。