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結言 第一話  作者: かずさき
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つなげることば

何も終わらないと思っているのに、何をしても、これが最後なのだと感じてしまう。



何を考えても、何を思っても、何を見ても、何を話しても、自分が二人いるのかと思えるほど対立し、先に進むことが出来ない。



僕は弱い人間だ。



出会わなければ、この悲しみを感じることなく、これほど泣かずにすんだ。



でも、出会わなければ良かったとは思わない。



どんなに苦しんでも、何度でも、弟として出会いたい。


いつも迷惑をかける、愛される弟として。





静かに眠る兄は、今も優しく笑っている。






傍に来ては何度も触れたいと思ったが、出来なかった。



兄の死を受け止める自分と、そうではない自分がいる。




今は、何が正しいのかわからない。



何も出来ず、時間だけが過ぎていく。




真夜中、誰もいなくなった部屋で二人きりになった。



僕にはわからない。


今、何をするべきなのか。



ただ泣くことしか出来ない。




時が止まったように、じっと兄を見つめ、涙だけが流れていた。




振り返れば短く思える過去を悲しみ、ただ涙を流し、時間が過ぎていく。




病院で、あの嫌な箱につながれ、何ヶ月も我慢した兄は、自由になった。



何処にでも行ける。




ただ、誰もそれを喜んではいない。




きっと兄も。



明日を見ることの出来ない僕だけが、あの時よりは良いのだと、そう自分に言い聞かせているのかも知れない。




自分の足で、自分の意志で、兄は此処に帰りたかったはずだ。




それは、誰にでもわかる簡単な事。





笑って、「またね」 と言いたい。




この次に会うのが、いつかわかるなら。



せめて、また会えると信じられるなら。





僕はこのまま、涙を流し続けても構わない。




悲しみで終わってもいい。




昔に戻ることが出来ないなら、せめて時間を止めてほしい。





明日、兄が行ってしまう。




多くの人の悲しく、そして優しい気持ちに包まれて。




僕の知らない場所へ。





僕を残して。




今日も晴れている。

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