つなげることば
何も終わらないと思っているのに、何をしても、これが最後なのだと感じてしまう。
何を考えても、何を思っても、何を見ても、何を話しても、自分が二人いるのかと思えるほど対立し、先に進むことが出来ない。
僕は弱い人間だ。
出会わなければ、この悲しみを感じることなく、これほど泣かずにすんだ。
でも、出会わなければ良かったとは思わない。
どんなに苦しんでも、何度でも、弟として出会いたい。
いつも迷惑をかける、愛される弟として。
静かに眠る兄は、今も優しく笑っている。
傍に来ては何度も触れたいと思ったが、出来なかった。
兄の死を受け止める自分と、そうではない自分がいる。
今は、何が正しいのかわからない。
何も出来ず、時間だけが過ぎていく。
真夜中、誰もいなくなった部屋で二人きりになった。
僕にはわからない。
今、何をするべきなのか。
ただ泣くことしか出来ない。
時が止まったように、じっと兄を見つめ、涙だけが流れていた。
振り返れば短く思える過去を悲しみ、ただ涙を流し、時間が過ぎていく。
病院で、あの嫌な箱につながれ、何ヶ月も我慢した兄は、自由になった。
何処にでも行ける。
ただ、誰もそれを喜んではいない。
きっと兄も。
明日を見ることの出来ない僕だけが、あの時よりは良いのだと、そう自分に言い聞かせているのかも知れない。
自分の足で、自分の意志で、兄は此処に帰りたかったはずだ。
それは、誰にでもわかる簡単な事。
笑って、「またね」 と言いたい。
この次に会うのが、いつかわかるなら。
せめて、また会えると信じられるなら。
僕はこのまま、涙を流し続けても構わない。
悲しみで終わってもいい。
昔に戻ることが出来ないなら、せめて時間を止めてほしい。
明日、兄が行ってしまう。
多くの人の悲しく、そして優しい気持ちに包まれて。
僕の知らない場所へ。
僕を残して。
今日も晴れている。