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結言 第一話  作者: かずさき
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つなげることば

兄が家に帰って来たのは、そのすぐ後だった。




病院で横になっていた、たった数時間前の兄と何も変わらない。


ただ、少しだけ自由になった兄がそこにいる。




兄のために、朝早くから多くの人が来てくれた。


兄は自分の病気の事を誰にも話していなかったようで、誰もが兄の突然の死に驚いていた。




半年、たった半年前には何もなかった。考えた事もなかった。



兄に会いに来てくれた沢山の人に、何度も、何度も、同じ事を話した。




兄の闘病生活、そして最期まで諦めなかった事を…。


ただ、何を話しても意味がないのはわかっていた。




話をして楽になりたかった。


一人になるのが怖かった。



僕は孤独を感じていたから。




誰といても、何をしていても、孤独を感じた。



そして話せば話すほど、心を閉ざしていくのがわかる。




それでも、止めることは出来なかった。



まだ兄の背中を探している自分がいる。




心を閉ざして見つけられるものはないのに。






僕にとって兄は、誰にでも自慢できる存在だった。

ただ、一度も、それが伝わるような事を本人には言わなかった。



兄弟なのに恥ずかしかった。


きっと兄弟だからだろうか。






兄は小さな頃から頭が良かった。


そして人に優しく、自分に厳しい人だった。





両親が共働きだった為、兄が小学二年の時から、毎日僕を保育園まで迎えに来てくれていた。




学校が終わると一度家に帰り、荷物を置いてから僕を迎えに来た。


保育園とは反対方向にあるのに、僕の荷物を持つためだけに。




迎えに来るだけでも大変な事なのに、母が帰ってくるまで、毎日僕の面倒を見てくれた。




兄の友達ともよく遊んでもらったが、ずっと後ろに付いていく僕は、皆と同じように扱ってもらえなかったり、自分の好きではないことになると、すぐに兄を困らせた。



勿論、兄の友達にも迷惑をかけていたので、僕がいると嫌だと言われるときもあったようだ。




そんな時に兄は決まって、何も言わず僕の手を引き、その場から離れようとした。



「まだ遊びたい、みんなと一緒に遊ぶ。」


と、我が儘を言う僕に



「他にも楽しい事はあるよ。」


と僕に微笑んだ。





いつもあの笑顔を見ると安心する。



それは大人になっても同じだった。



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