(第080話)鋼身の列
悠爾たちが燧灘町から脱出したころ、彩華達金が谷地区で鋼身に生まれ変わった者たちは、愛媛のずっと山奥へと向かっていた。この頃、世界各地で人類が機械になる事例が続出していたが、それらは当初全てが「鋼身」といわれていた。だが実は二種類の「鋼身」が存在した。
金が谷地区の”パンドラの鉄棺”から生じた媒体によって機械生命体になったものは、地球ではない別の世界から差し伸べられた力で変化した者であった。そちらの方は比較的温和で攻撃性も残虐性もそれほど持ち合わせていなかった。
問題なのは、自衛隊の纐纈などのように、秘密結社”ファッショ”が密かに”パンドラの鉄棺”のテクノロジーをデットコピーした「鋼身亜種」の存在だった。これは、地球のテクノロジーで再現しようとしたものだったが、再現に失敗したものがあった。それは「秩序」ある人類機械化だった。
その「鋼身亜種」こそが2022年春の世界各地で混迷状態を生み出した忌まわしい存在だった。しかも”ファッショ”は理由は不明だが「鋼身」の方を駆逐しようとしていた。そのため日本の鷹塚首相は異常な強硬策を取っていたわけである。その真意をしることなく・・・
「泉里さん! みんなをこんな身体にした責任を取ってくださいよ! こんな山登り、生身だったら出来ませんよ」
彩華は初夏に向けて成長しつつある雑木林の下草を掛け分けながらみんなと同じようについていった。先頭はもちろん、この鋼身ユニットのリーダーの泉里だった。彼はニートだったときとは打って変わり、一際大きくたくましい戦闘マシーンのような凛々しい姿になっていたが、その内心は機械になっても本質的には変わらなかった。ただ、ユニットの上位にあるなにがしらの存在からの指示に従って行動していた。
「そうだね、みんな巻き込んでしまって・・・すまない! でも、もう元の人間の姿には戻れないから。まあ、外見だけならある程度カスタマーできるから!」
泉里の言葉に後ろを歩いていた小さな少女ロボが口をはさんできた。
「カスタマーしてくれるって本当? わたし、まだ中学生だったのよ! もう少しすれば大人になっていい女になるって信じていたのに、こんな幼児ロボみたいなのはどうにかしてもらえない、早く!」
その小さな少女ロボは最初に”パンドラの鉄棺”の洗礼を受けた中学生四人組の一人だった。たしかに、機械人類になったのはいいが、ずっと幼児ロボのままはいやだと思っていた。すると後ろの同じようなロボットが茶々を入れた。
「そのまま幼児ロボでもいいんじゃないかい? 人気が出ると思うよ、きっと!」




