(第076話)世界騒乱
鷹塚という男は平凡な議員だった。前の首相は強硬だがそれなりに実績を上げていたが、なぜか突如病気を理由に引退してしまった。その裏には操っていたものの采配があったからだ。
そのようなことは、世界各国も一緒であったが、いづれの国の指導者も自国第一主義者で排他的であったというのが共通していた。だから利害が対立し協調することは無かったし、民族主義的なことを翠帳していたのも共通していた。だから、危機が後戻りできぬ事態でも何ら有効な対応が出来なかったわけであった。
そんななか、最近各国の政治指導者の交代が頻繁になっていた。アメリカの大統領と副大統領が相次いで死去し、レイノルズ女史が就任しているし中国の主席も代理の代理が就任したばかりだ。そんなこんなで新たな首脳同士が会談したことがなかった。
そんな国同士の結びつきが弱くなっている時期に、鋼身に人類が変化する事態が発生していた。はっきりした事ではなかったが、どうも高度に科学文明を享受している地域になるほど頻繁に起きているようだった。
最初に確認されたのは4月5日のニューヨークなどであったが、早いうちに鋼身を拘束し監禁したうえ情報統制を行ったので、知られることはなかった。だが、その情報統制が互いの国々の不信感を招く結果になった。
ほぼ同じころ、秘密結社による地球製鋼身の人体実験が国連UNTANK統治下の半島北部で行われていたが、実験が失敗し暴走しはじめていた。中国主体の国連軍による封じ込めに失敗し爆発的に拡大していたが、その情報も統制により正しく伝わることは無かった。結果として大陸各地はデマによるパニックで騒乱状態に陥っていた。
そんななか、日本では各地で鋼身が出現するようになっていたが、各国の例とは異なり、鉱山跡そばの過疎地で発生したので、武力による封じ込めを実施していたが、それも限界が到来しつつあった。そのうえ、秘密結社は都市部で”黒き菓子折”なるものを発動すると通告してきたのだ。
そんな状態の中、凡人の鷹塚はただ事態の推移を見ているしかなかった。自らの能力では負えない未曽有の危機に直面する運命を呪いながら・・・




