(第070話)人類の裏切り者.5
苫米地が向かったのは燧灘高校のグラウンドに設置された前線基地だった。そこの隊員にも鋼身になった者を見る事ができた。そして案内された先の部屋には、胸に纐纈とかかれた男が立っていた。その男は苫米地からすれば最初から要領の悪そうに思っていた。
「小隊長、無事の帰還なによりです。これから国家安全保障会議の決定が伝えられます」
モニターには首相以下の閣僚の画像が映し出されていたが、それは過去のモノのようだった。話し合いの様子だけが映し出されていたからだ。
「愛媛県上空50Kmで核弾頭が炸裂したそうだが、なぜ我が国の領土から発射されたのかね」
憲法の非常事態条項を発動しているなど、一連の強硬策を取っている鷹塚二郎首相も今回起きたことに戸惑うが隠せない様子だった。いつの間にか日本に核兵器が持ち込まれたのか分からなかったからだ。
そのあと、これはどうだあれあどうかといった、内容のない事ばかりいっていた。その様子を見て苫米地はあるフレーズを思いだしていた。「小田原評定」だ。鋼身が世界各地で増えていっているのに国民に隠し通そうとして、一方で殲滅しようとしている。このような状況を続けていても、日本いや人類の滅亡は免れないのではないかと。
そして最後に示されたのが、当面の措置として四国全域の封鎖という事だった。これは全面的に交通を遮断するとともに通信網も一部を除き封鎖するものだった。ようは鋼身の拡散がひどく殲滅するのが難しい(それをやると四国が焦土になる)ので、実行するするものだった。
とにかく君ら小隊はそこで駐留するように! 必要な物資は送れるようにするからそのつもりししてくれ、以上」
統合幕僚長からの指令はそれだけだった。苫米地は纐纈に詰め寄った。
「てめえは、こうなることを知っていたんだろ? 俺らはトリガーを引くために送られた火付け役だろ?」
すると纐纈は冷たい目をしてにらみつけていた。
「ええ、どっちにしてもこの世界の覇者は交代しないといけないですから。あなたたちはその営みを加速してもらっただけですよ。こうして四国が切り離されたのですから、次は・・・」
そういって纐纈は服を脱ぎ上半身を裸にすると、変化が始まった。その身体はメタリックでグロテスクな金属だった。
「てめえ! それはいったい、何のつもりだ! お前らは」
苫米地は思わず近くにあったモノならなんでもいいので投げつけたいと思ったが、あいにくそういったものはなかった。
「どうせ、あなたは飼い殺しなんですからこの際言っときますが、既にこうなることは決まっていたのですよ。あなたたちの部隊によって破壊された鋼身たちも秘密裡に作られた施設で再生措置が行われています。明日からは住民のうち適合性のあるものから鋼身になってもらいますから」




