(第067話)人類の裏切り者.2
重質量爆雷に偽造した核弾頭の時限起動システム作動まで残された時間はわずかだった。その弾頭を取り巻く装置にはハングルで表示されたものが多かった。どうやら北のチェ政権が人民を犠牲にして力こそ生き残る術として製造させたものの一つのようだった。もっとも、チェ一族は生きたまま赤い霧となって消滅した。対空砲で粉々になったから。
泉里ら鋼身はユニットの制御人格ユリアの指示を受けていた。そのユリアは可憐な美少女のイメージを鋼身たちは受け取っていた。
「ユリア! この核弾頭をどうすれば無効にできますか?」
この地域にいる鋼身たちの事実上のリーダーの泉里はユリアに問いかけていた。問いかけるといっても鋼身同士の電子的ネットワークフィールドでコミュニケーションを取っているので、従来の人類には分からない世界だった。
「ここで起爆システムと核弾頭の接続を解除すればいいのですが。それでは、この地に核兵器が残存することになります。この重質量爆雷には固体燃料ブースターが残存しています。それを使えばいいですから」
ユリアの指示により大勢の鋼身たちは巡航ミサイルを急造してから、それを空に向けていった。
「泉里! いったい何をするんだ? ここで爆発させるつもりか?」
苫米地の叫び声が聞こえてきたが、鋼身たちはあっという間に作業を終えてしまった。そして急造の巡航ミサイルは夕暮れ空を上昇していった。
ミサイルから噴射されるガスは飛行機雲のようなものを引いていったが遥か遠くに消えていった。するとしばらくして宵の明星のような明るい点が見えた。どうやら高空で炸裂したようだった。
苫米地と小林は泉里ら鋼身たちのもとに駆け寄っていた。
「いまのは核爆発だろ! 大気圏外とはいえあんなことをやったら問題が起きるだろが!」
苫米地は興奮気味に詰め寄っていた。
「ええ多少は。でも大丈夫ですよある程度の放射性物質はあの方たちが瞬間的に別の世界に持っていきましたから」
泉里はそういったが、苫米地には「あの方」という存在があることは分かってもそれがなになのかが分からなかった。
「あの方といったが、それってお前ら鋼身を生み出した奴ではないのか? どうしてそんなことをしているのか、教えろ!」
「ええ、教えてあげます。ただ、約束してくれませんか? あなたは、もう戦わないと。どっちにしたって人類はこの地球の支配者の座を降りるのですから。そうそう、あなたも希望すれば僕たちの仲間にして差し上げますよ、絶対に」
そういって泉里ら鋼身たちは苫米地と小林を取り囲んだ。




