(第059話)変化したあとは.5
「ユニットか・・・やっぱりなあ」
小隊長はそういうと自衛隊のネットワークに接続できるタブレット端末を操作しはじめた。それに越智副大臣から送られていた機密ファイルが表示された。
「これは、世界各国で発生している人類鋼身化現象の一覧だが、すでに多くの地域で鋼身によるコミュニティーが成立しているようだ。そのコミュニティーをユニットだというんだ。
そのユニットに属す鋼身は、集団行動をするとのことだが、それが成立すると、もう人類は・・・」
「人類は、どうなるというのですか?」
人間の姿を残していた隊員が詰め寄ってきた。
「はっきりしないんだが、人類は駆逐されるようなんだ。もっとも人類の方が逃げ出すという方が正しいかも。全ては人類社会が最後のチャンスを潰したというわけだ・・・まあ、そのあたりは今論じても意味はない。取りあえずお前は鋼身になった連中を連れて脱出しなさい!」
そう言って小隊長は缶ビールを一気に飲み干してしまった。もう、逃げるのは諦めているようだった。
「小隊長! さっきユニットを司るユリアとコンタクトしたら一つだけ方法があるそうです! 自分に重質量爆雷の処理をみんなでやらせてください!」
そういうと、後ろから近づいてくる影があった。泉里だった!
「まあ、そういうことだ。あんたたち自衛隊のせいでわしらの住む里が無茶苦茶にされたくないから、協力するわけさ」
その時、泉里は他の鋼身よりも倍近い体格になっていた。どうやら彼がこの地区にいる鋼身たちのリーダーというわけらしかった。
「そうかあ、鋼身は人類の敵として戦ったんだが・・・いったいどうしたものか! まあ、時代が変わろうとしているのだから、そんなものは関係ないかもしれんけどさ」
「分かっているじゃないか! あんたはどうやら鋼身にはなれそうもないけど、別に悪いようにはしないからな、とりあえず」
そう言っている間に、自衛隊の攻撃から逃げていた鋼身が続々と集まってきた。これから一体何をするというのだろうかと、小隊長は少し酔った頭で考えていた。