(第058話)変化したあとは.4
鋼身には様々なタイプがあるが、この金が谷地区では男は昆虫型の外骨格タイプ、女はガイノイド型に変化するものが多かった。男の場合は戦闘的と思われ多数が破壊された。そのため自衛隊員の中には破壊された鋼身の呪いで同じ姿になるという事を主張して発狂する者がいた。
そんな昆虫型の鋼身に部下が変化していく事に小隊長は酒でも飲んでいないと正気が保てない気がしていた。ちなみに酒は、経営者が避難した酒屋から持ち出して来た(代金はレジの上に置いてたが)ものだ。
「これが最期の晩餐か、ここに女房と娘もいたら最高なんだが」
小隊長は諦めた表情で語っていた。周囲は破壊された鋼身の残骸が散らばり、壊れた家や車から煙が上がり、夕陽がそれらを靄のように輝かしていた。それを廃墟の美とするか地獄の手前と見るかは個人の趣味であったが。
そんな時、目の前で鋼身になった隊員が起き上がった。さっき意識の中でユリアが語り掛けた隊員だった。
「小隊長! 自分は鋼身になってしまった! どうすればいいんですか? まさか自爆しろとでも?」
「そんなことは言わない。お前は自由さ! どっちにしても、人類がこの地球の支配者であるのは終わりだ。お前たちの時代というわけさ、それよりも早く脱出しろ! 誰かさんかがセットした重質量爆雷があと15分で作動するから、この地区にいたら木っ端みじんになるぞ!」
「では、なぜ逃げないのですが?」
「それはなあ、お前たちの意識が戻った時に誰かが伝えないといけないだろ? それに稼働可能な車両は全て脱出したからな。この地区から安全な場所に避難するなんて徒歩じゃ無理だからな」
そういうと、小隊長は缶ビールを渡そうとしたが鋼身になったことを忘れていたかのような行動だった。それでも鋼身になってもアルコールを摂取しろとでもいうのだろうか?
「自分は・・・意識の中で告げられたのですが、外見は機械のようになってもまだ内部は人間の消化器官が残存しているので飲めますよ!」
そういって缶ビールを開けると口からチューブのようなものを伸ばして摂取し始めた。その様子は機械というよりも昆虫のようにもみえた。
「そうかあ、鋼身はやっぱり人間だった時の理性が残っているのだ! それを俺らは命令によるものであったが、殺してしまったわけか・・・もう今更どうなるわけでもないがな」
「そうですよ! 自分らは姿はどうあれ人間の時の理性はありますよ。ただ、仲間同士と情報を共有できるようになっていますし、それに何をすべきなのかがユニットが指示してくれますから」




