(第057話)変化したあとは.3
小隊長らが酒を口にしようとしていたころ、鋼身へまさに変化しようとしていた者の一人が意識を取り戻した。彼は作戦初日から戦闘に参加していた隊員で、狙撃手だった。今回は鋼身に生まれ変わった住民を狙撃し行動不能にするのが任務だった。
初日には中学校の体操服を着た鋼身などを破壊したが、日を追うごとに戦果が減っていった。どうやら鋼身は自衛隊の行動を把握し、回避するようになった。だが、それは一つの疑問があった。鋼身は集団で行動しないのに、どうやってコミュニケーションを取っているのだろうかと?
そんなことを思ってはいたが、先ほど”パンドラの鉄棺”を破壊した際に飛び出してきた機械蟲が後頭部に張り付いた事によって、身体が機械へと変化し始めた。しばらくしてから気を失っていたが、目を覚ますと身体が機械になっていることを思い知らされてしまった!
「小隊長・・・自分はどうなっているのですか?」
そう、質問しようとしたが声にならないことに絶望してしまった。その時、目線を下にやろうとしたら、その光景は電子的処理されたものだと分かった。この時、神経組織と大脳皮質が有機物と金属が合わさった特殊な素材へと変わりつつあった。体内の生体組織は機械的なものへと変換され、意識は電磁的記憶媒体に書き写されているのが分かった。どうやら魂もデジタル化されたような感覚がしてきた。
わずかに動く掌を胸に添えてみると、血が廻った生身ではなく、特殊な複合素材の外骨格に覆われていることがわかった。それにしても、人間をこんな風に変えることが何故出来るのだろうか?
そんなこんなの疑問を思っていると、どこからか答えを与えてくれる存在を感じ始めていた。
「あんた、誰なんだ?」
隊員は心の中でつぶやいた。すると電脳化されつつある意識の中で女神のような少女のイメージが浮かぶ上がってきた。
「我が名はユリカ。このユニットを司る統括システムです。あなたはもうすぐ我々の友人であり同志で、そして構成体として生まれ変わるのです」
「構成体? それって鋼身のことですよね。どうしてこんなことをするのですか? 自分は相当数の彼ら彼女らを破壊したのですよ。そんな事をしたというのに・・・受け入れてくれるというのですか?」
「ええ、受け入れますわ! なんだって鋼身になるのがこの地球で暮らす人類の運命ですから」
そういってユリカは意識の中で舞をしはじめていた。その姿は華麗な少女に他ならなかった。




