(第056話)変化したあとは.2
小隊長の目の前には機械蟲によって鋼身に変化しつつある自衛隊員や警察官が並べられていた。作戦開始当初は鋼身に変化し始めた隊員が出た場合、活動停止状態になればどこかにある研究施設に輸送され、また抵抗すれば破壊措置が取られていたが、総員退去命令を出したため、そういった事はもう出来なくなった。後は自衛隊の秘密兵器重質量爆雷の餌食になるのを待つだけだった。ただし、動けるまでになれば小隊長は逃げてもらうつもりだった。いままで一緒に戦ってきた仲間が鋼身になったからといって、巻き添えにさせるのが忍びなかったからだ。
「小隊長。本当のことをおっしゃって下さい。今回の作戦は一体なんのためだったのかご存知なかったのですか?」
部下の男はようやく火がついたタバコで一緒に一服していた。任務中にこんなことをしていたら懲戒モノかもしれないが、どっちにしても脱出は無理だと悟っていたから。
「それなんだが、俺も急遽派遣されてきたので分からないけど、どうやら世界各地で同様の事態が起きているようだ。しかし、どこの国も移民や難民を受け入れたくない、とにかく自分たちだけがよければそれでいいんだという排他主義者が幅を利かせているだろ? だから、そういった不利になる情報を共有してこなかったから、事態が悪化するまで何にもできなかったわけさ。
我が国だってそうだろう? やたらと日本人が一番だから他の日本を良く思わない国と関係を断とうなんて主張する奴を政権内にいれたりするから、前に向いて話が進まんかっただろ? あの内務次官をしていた桜原という男が今回の憲法の非常事態条項適用を強硬に主張したそうだ。おかげでこんなザマだ!」
「小隊長。そんなふうに文民を批判するのはまずいですよ! でも、もう関係なくなるでしょうけど」
「そういうことさ! もし桜原のデブ野郎に会えたらボディーブローでもなんでも噛ましてやりたいものだ。あいつがUNTANKへの要員派遣を拒否したから、鋼身の情報が我が国に入ってくるのが遅くなったそうだ。これは知り合いの越智がいっていたから確かさ!」
「越智って、まさか、あの防衛副大臣の?」
「ああ、そうさ。なんでも越智の故郷なんだそうだ、この愛媛は! だからくれぐれも無茶苦茶にしないでくれといって色々と機密情報を教えてくれたけど・・・役にたたんかったな」
「それじゃあ小隊長はどうすればよかったと思うのですか?」
「それが分かったら苦労しなかった! ただ鋼身になったからといって殺すことはなかったとは思うさ。少なくともゾンビのように理性は失っていないようだからな」
そういって小隊長は酒瓶まで開けようとしていた。最期の乾杯という事になりそうだった。




