(第048話)解き放たれた封印.1
悠爾と朋美はうんざりしていた。いくら同級生のためとはいえ、広野に薄暗い坑道を連れまわされているだけのように感じていたからだ。それは野村も一緒で”パンドラの鉄棺”をどうするのだろか、一体正体はなんなんだろうかと考えていたが、訳が分からなかった。
一応、新聞記者のはずだが自衛隊によって町が封鎖されることをいち早く知っていたし、怪しげな装置も持っている。それに、なぜ? いろんな疑問があとからあとへと溢れて来るばかりだった。
そんなこんなを思いつつも、ようやく”パンドラの鉄棺”らしきものを一行は発見した。それは古墳の石棺のように真四角であったが、表面が黒光りする金属板に覆われていた。大きさは大人の身長のものが入れそうなサイズはあった。またその金属板は黒鉄のようであったが、何やら文字らしい文様がびっしりと刻み込まれていた。
「広野、これがお前がいう”パンドラの鉄棺”なのか?」
野村はメガネについたゴミをはたき落しながら聞いていた。すると広野は肩にかけていた装置を降ろしながら答えた。
「ああ、そうだ。これが今回の騒動の原因さ。しかも、全世界各地で確認されているものの一つにすぎないさ」
「全世界各地で確認? すると同じものがたくさんあるというのか?」
「ああ、そうだ」
「そんなにあるんだったら、此処のを止めたところでダメと違うんじゃねえんかよ?」
「そういうかもしれないが、此処のは特に止めないといけなかったのさ。この国の政府は全世界で人類が機械化する現象が蔓延していることをひた隠しにしているが、すでにいくつかの国は機械化した住民の国に成り代わっているのさ。その事実を隠すのはもう難しいだろうがな。だけど、希望があるのさ。この装置は! 」
広野はそういって持参してきた装置を”パンドラの鉄棺”の上の方とコードで接続した。すると装置は大きな音を立てて作動し始めた。
「広野さん、これっていったい?」
悠爾は少し耳を手で押さえながら聞いた。作動音は坑道全体に広がり耳障りだったからだ。
「実は、これは”パンドラの鉄棺”に隠された電子頭脳とコンタクトする装置なんだ。いま”鋼身”を生み出した連中の文明とコンタクトしているわけさ」
「コンタクト? それって?」
「ああ、地球外生命体さ。しかも地球よりも遥かに進歩した奴らさ」
「そ、そういうことは、今回の事態は地球侵略の予兆ですか?」
「そうかもしれないが、違うかもしれないな。もし侵略ならばあっという間に人類を改造すれば済むことなのにあえてしていない。
実は、人類が機械化人になる現象は既に半世紀前から確認されていることだったんだ」
「半世紀前?」
広野の話に野村も悠爾もびっくりした声を出したが、あいかわらず朋美はきょとんとしていた。