(第037話)勝負銅山にて.2
野村先生と合流した一行は”パンドラの鉄棺”があるという勝負銅山に向った。その銅山は金が谷地区の南側にあり四国山地の麓、中央構造線と呼ばれる断層に位置しており、そこに銅の鉱床があった。同じように有名な銅山としては別子銅山があるが、勝負銅山の歴史は古く奈良時代に操業していたという伝説があるほど歴史が古かった。
ただ鉱床は昭和時代中期に枯渇し閉山から半世紀以上が経過し、すでに自然へと帰ろうとしていた。そのため坑道の多くが崩壊し関連施設も廃墟として雑木林の中に醜い残骸を晒していた。
一行は、彩華のメモを頼りに勝負銅山の隠された空気取りのための縦穴を目指していた。本坑入口跡は金が谷地区の中にあるが、そこは自衛隊が警備しているので、監視の目が届いていない縦穴を目指していた。
「広野! こんなこと自衛隊に任せればいいだろう! それよりも、どうして政府は憲法の非常事態条項を発動してまでこんな田舎町を封鎖したんだよ! そっちを世間に知らせるべきではないか?」
野村は一行の先頭を行きながら広野に聞いていた。先頭にいる野村は道なき道を切り開くように高く伸びた雑木林の下草をなぎ倒しながら進んでいた。
「自衛隊とは別の方法を試すのさ私は! それに、政府だってもうすぐ国民全体に今回の事態は人類滅亡に至る恐ろしいものだと認めるしかなくなるさ。そう、来週には・・・」
この時、広野の言った来週には、という意味は分からなかったが、本当に何かを隠しているのを感じさせる言い方だった。
縦穴は金が谷地区を見下ろせる北側斜面の中腹にあった。そこから草の茂みから覗くと夥しい自衛隊の車両とヘリコプターが駐留しているのが確認できた。特に地区の中心にある中学校のグラウンドはさながら前線基地の様相を呈していた。
その様子を悠爾はマジマジとみていたが、野村に速く縦穴に行くようにとジェスチャーされた。彩華のはなしによれば自衛隊は不審者であればすぐ発砲するのも厭わないということだったので、見つからないようにしないといけなかった。
縦穴の入り口の鉄格子は腐食により大きな穴が開いていたので、難なく入ることができた。一行が進入した立坑は人が一人通れるぐらいしか幅がなく、朽ちかけた点検用の鉄製のハシゴを注意しながら降りて行った。
そのとき悠爾も朋美もついてきたことを後悔していた。彩華に頼まれたとはいえなんでこんな危ない橋を渡るかのような事をしてしまったのかと。それに学校は休校中とはいえ登校しなければ町を占領している自衛隊に知られてしまうのではないかと。




