(第036話)峠のお堂にて.4
その晩は花冷えという言葉があるように冷えてきた。三人は身を寄せていたけど悠爾はもし広野という「大人」がいなければ、間違って朋美とあんなことやこんなことをするんじゃないのかなという妄想をしていた。もっとも彼女を「女」なんて見たことなどなかった。
そう思ったのは、父の高志が大量に持っていた小説の中に、男女二人が人里離れたところにいる時に、そういった男女の関係になってしまうという物語のプロットがよくあったからだ。まあ定番といってもいいだろうと思っていた。
もっとも悠爾は仮に広野がいなくてもそんな事にはならないと思っていた。朋美はそんなことを望む少女じゃないと認識していたからだ。だから、悠爾が関係を迫ったとしたら拒絶されると思っていた。
でも、そんな二人にちょっかいを掛ける者がいた、悠爾の父だ。彼は婿養子として坂垣家に入ってきたが婿入りの際の条件が大量の蔵書を持ち込むことぐらい本が好きな男で、特に恋愛ものやSFが好きだった。
そのため悠爾が朋美を女とみなさないことを不思議だと言って、はやく婚約してから堂々としなさいなどと冗談を言われたものだった。
まあ、そういうのは坂垣家と片山家には彼一人だけで当人同士は全く意識などしていなかったが。
「そうそうお二人さん。安心してお眠りなさい。私が見張っているから大丈夫さ。ここは自衛隊の封鎖ラインから外れているから大丈夫だから」
広野にそう言われ二人は全てを任せて眠ることにした。少なくともここにいる三人にはロボット化の兆候がないから安心だと思って眠ることにした。
「明日、起きたら三人ともロボットになっていたなんてオチがなければいいわよね。そうそう、わたしにエッチな事をしなさんわよ、そこの男二人!」
朋美はそういって眠りに落ちたが、彼女の方がこういった逆境には精神的に強いんだと悠爾は思っていた。クラスメイトの間では朋美がもし男だったら番長のようにクラスを引っ張っていたかもしれないと言われていた。もっとも、教養の方は・・・あんまりなかったが。
悠爾はまどろみの中でぼーと目を薄く開けていた。夜になると最近ぐっすり眠れなくなっていたからだ。封鎖された住む町、ロボット少女になったクラスメイト、半島にいったきり音沙汰がなかった父が送ってきたUSBメモリー、そして謎の新聞記者の広野についてだ。彼は本当に怪しかった!
そんな怪しい行動をする広野への疑惑が確信へと変わる瞬間が訪れた! 使えるはずないネットを使って何者かとコンタクトを取り始めたからだ!




