(第029話)ふたりのロボット少女.1
いつものように朝がやってきた。空気は少しずつ暖かくなり春から初夏へと季節は移ろいでいくのが分かるが、この町の風景は永遠を感じるほど変化はないはずだった。しかし、何かおかしな方向へ変わろうとしていた。もう、いつもの朝というものは過去のものへとなろうとしていた。人類にとって・・・
悠爾は学校に行ったが校門には一枚の紙が貼られていた、それには当面の間閉校するとだけあった。ただし生徒は教室に行くようにと書かれていた。こんなアナログな方法をとるのも電話が通じなくなっているからだ。
教室に行くとそこにはいかつい制服を着た男がいた。なぜか自衛隊員だった。なにやら始めようとしていた。そしてこう話を切り出した。
「わたしの名前は・・・まあ名札をみたまえ。取りあえず君たちはこの町からは当面出る事は出来ない。ただ生活に必要な物資は支給されるしほしい娯楽も可能な限り提供すろ。もちろん勉強はしたまえ」
その男の名札には纐纈と書いていたが、最後まで自衛隊のどのセクションに属していたのかはわからなかった。ただ、どうも特殊任務隊員だったようだ。
「あの! いったいなんで自分たちはこんな風な目に会わないといけないのですか?」
薬師神が手をあげて質問した。最近施行された日本国憲法の非常事態による条文の適用一時停止が出来るとあっても、その原因が全く説明がないことが不思議だったからだ。しかし、その隊員はロボットのプログラムのようにただこう答えた。
「そりゃ・・・お上が非常事態と言っているのだからそうしただけで、説明責任を果たす必要性も停止されているから、その理由を君たちに言う必要もない」
「じゃあ、いつ話してくれるのですか?」
「そりゃ・・・お上が非常事態じゃなくなったら説明するというわけです。だから大人しく聞いていなさい。別に悪いようにはしないから」
「悪いようにっていわれても、うちの同級生の机が昨日持っていかれたのですが、僕たちもなんかになったら同じようにするんですか?」
「そりゃ・・・そうだなあ。どうなったら、そうなるのかは、これもまた国家機密だ! ここで話す事自体が犯罪になるから」
あまりにも頭が悪そうな自衛官との会話にクラス内の空気は白けていた。本当の事をいえば彩華たち金が谷地区の住民の何人かが町内に逃走していて、捕まえるために封鎖したというのではないかと、すでに住民の間で噂になっていた。
そのことを知っているはずなのに、この自衛官はまだ隠そうとしていることに呆れていたのだ。いくら職務のためとはいえ、住民にウソをいっている事にうんざりしていた。




