(第026話)人類の黄昏前夜.2
悠爾は片山家から家に戻ってきたのは午後十時を回っていた。この時には燧灘町全域が封鎖されていたが、町内は特に監視されているわけではないようで普段と変わりない様子だった。しかし坂垣商店は大変な事になっていた。店の裏にある事務机に悠爾の祖母の環希が深刻な顔をしていた。その理由は悠爾の帰りが遅くなったからではなく、明日からの店の営業についてだった。
「おかえり悠爾、本当に遅うなったんかい? 朋美ちゃんの家で大変な事があったといっていたけど、解決したんかい?」
環希の心配は明日から商品の搬入が行われない事だった。封鎖している間は自衛隊が必要な生活物資を支給するとはいっても、店の営業はどうするのかは通達がなかった。しかも、それは町内の他の商店やコンビニも一緒で、特にコンビニは弁当なども全て入らなくなるので途方にくれているようだった。
「まあ朋美の方は・・・大丈夫のようだよ。でも心配だからまた後で行くよ」
「そうか・・・お前にも手伝ってもらいたいことがあると、いつものように言いたいところだけど何もないんじゃよ。明日からもいつものように店を開けるつもりだけど、いつまで続けられるか、わかんねんしな。
ところで悠爾、お前宛に父さんから手紙が来ているぞ。わし宛の手紙にお前に読んでもらいたいことがあると書いてあったんじゃが、なんじゃろうなあ」
そういって渡されたのは、封筒にUNTANKの公用郵便を示すメータースタンプが貼られた高志からの手紙だった。開けてみると小さなUSBメモリーを入れたキーホルダーがあった。
「これって、親父が見ろという事だろう。ばあちゃんパソコン使えないかな?」
「すまんが、いま店の在庫確認をしているので使えないんじゃ。それにお前にやったパソコンがあるだろう?」
「あれかい? USBの差し込み口が壊れていて見れないんじゃ。だから・・・まあ親父のことだから急ぐようでもないだろう。ところでお袋はどうしたんだ、まだ帰っていないようだけど?」
「万里江かい? 松山に用事があるって言ったんだが・・・もしかすると検問で止められているんじゃないんかい? 連絡もつかないんじゃよ。
こんなことになるんだったら、憲法に非常事態条項を入れることに賛成票なんかいれるんじゃなかったわい。こんなイカレタ事になるぐらいだったら・・・」
環希がそういったところで、つけっぱなしにしていたラジオから今回の事に関するニュースがようやく伝えられようとしていた。




