(第019話)逃げてきた彩華.4
彩華は色白であったが、そのあたりで良く見かけるごく普通の少女だった。なのに彼女の身体はロボットのようになりつつあるようだった。
「長和さん、その叔父さんは鉱山で鉄のような箱を見つけたのではないですか?」
広野はそういうと手帳から一枚の写真を取り出して彩華に見せた。そこには金属製の箱が積み重ねられた光景が写されていた。
「そうです! わたしが叔父に見せられたものに似ています。でもこれはどこの写真ですか?」
広野は何かを確信したかのような表情をして、カバンの中にしまっていた「アマノイワト作戦」と書かれた冊子を開いて説明し始めた。
「さっきの写真は朝鮮半島北部にあるソンマ鉱山で撮影されたものです。そこは中国空軍主導の国連空軍によって破壊されたようですが、詳細な事は一切わかりません。
ただ、こちらの冊子によるとこの鉄のような箱は人々を異形のモノへと変える物質が詰まっていると記述されています。おそらく自衛隊はこの冊子の計画案を基に行動していると思われます」
「ちょっと待ってくれ! そういうことは自衛隊はこの町を封鎖しているのは、この鉄のような箱の中身を出さないためか? もし妨害しようとする者がいれば武力行使もやむなしというわけなのか?」
広野の話に野村が割り込んできた。今、教え子二人がわけのわからないモノに変化しているのが信じられないというのに、さらに自衛隊が介入しているとなると・・・状況は悪化しているようにしか思えなかった。
「そういうことです。しかも冊子によれば世界同時多発的に起きるとあります。だから初期対応に失敗すれば・・・人類の存続は難しいとあります」
「ちょっとまってくれ! そういうことは政府のお偉方は何が起きているのか分かっているというのかよ? その冊子にはなんて書いているのだ?」
「それが・・・肝心な部分が全て黒塗りでして・・・長和さんの状況をみると、多分人類がある種の要因にかかることで機械の身体に変化することになるのだと・・・そのようにしか思えません」
「ふざけんなよ! そんなSF小説みたいな事が起きているというのかよ? さっき見せてはもらったけど・・・さっきの写真の女のようにガイノイド(女性版アンドロイド)みたいになるというんかよ! うちの生徒は!」
野村が逆上したところで彩華が割って入ってきた。
「そのガイノイドの写真見せてくれない?」
「ええ、いいけど。ショックを受けないでね」
広野は彩華に写真を渡した。それは朝鮮半島で急速に数を増やしている鋼身の女の写真だった。




