(第017話)逃げてきた彩華.2
朋美の家の蔵に匿われていたのは長和彩華だった。そう自衛隊などによって封鎖された金が谷地区に暮らしていた生徒だった。彼女を見た野村は近づこうとしたが朋美に止められた。
「先生、彼女の身体には・・・なんていっていいのか分からないですが、その変なんです。しかも、それは感染するみたいでして。もしかして、この町が封鎖されている原因なのかもしれません」
そういうと、朋美は隣にうずくまっている女子生徒を見た。彼女は同級生の西本明日菜だった。彼女が理由を説明し始めた。
「長和さんは、どうも山を自衛隊に見つからないように歩いてこの家に来たみたいです。それで片山さんのおばあさんに頼んでこの蔵に隠れていたようです。それで片山さんとわたしが彼女を見つけた時、酷く体調が悪いようなので介抱したのですが・・・片山さんはなんともないのに、わたしは・・・」
そういって明日菜は自分の手のひらを見せた。その手は青銅の粉を吹いたようになっていた。
「これは・・・ウルシかなんかにかぶれているようにかゆいんですが・・・気のせいか固くなってきているようで。どうも長和さんと同じようになってしまうようなんです。身体がものすごく熱い!」
そう言ったとき、彩華の意識が戻った。彼女の顔は山のあちらこちらでとげのある木にでもこすったのか傷だらけで髪の毛にはスギなどの葉っぱが絡まっていた。そして着ているジャンバーは泥にまみれ、傷だらけになっていた。
「明日菜! あんたを巻き込んだのはすまないけど、わたしも何が起きているのか分からないのよ。ゆっくりだけどわたしの身体は・・・人間ではなくなっているようなのよ。その変化は・・・金が谷の人たちに広がっているわ。
私には変化はなかったんだけど、朋美のおばあさんに会ったときにはもう始まっていたわ。もしかすると、わたしは・・・人で無くなるわ」
彩華が息も絶え絶えに自分が人間ではない別のモノになっていくといっているようだった。しかもそれは金が谷地区全てに広がっているようだった。
この時、野村と校長はなんのことか頭をかしげていたが、広野は見当がついていた。これが日本政府が憲法の非常事態条項を秘密裡に適用して封じ込めようとしている危機なんだと。
「長和彩華さんといったよね? 君はどうして逃げてきたのかね? もし自衛隊が出動しているなら適切な治療なりを受けさせてくれるはずよね?」
広野は尋ねたが、それを聞いた彩華は顔が青ざめた。
「自衛隊は・・・味方ではないわ! あんな事をするだなんて、あんな人間扱いしない奴らに・・・」
その声色は憎しみが籠っていた。




