(第014話)隠蔽された迫りくる危機.3
日本各地で人間が機械生命体になってしまうというのを野村は信じられずにいた。こんな事が起きているのなら、もうとっくの昔に公になっているはずなのに。それなのに・・・そう思ったところである事に気付いた。
「広野、ひょっとして政府が例の憲法の非常事態条項を適用しているという事か?」
「そうだ、一昨年施行された憲法修正追加条項があるだろ? 国家の存亡の危機にあるときは一時的に法律の適用を除外すると。だがら政府は隠蔽のためにありとあらゆる手を使っているわけさ。
でも、もうすぐそれも破綻するぜ。隠したところで機械生命体の活動を止めることは出来ないし、それに方法としても不適切だぞ。なんだってパニックになるのも時間の問題だぜ」
広野の話に野村は昨日校長から見せられたメールの内容に納得した。それによれば、日本各地で生徒が金属に覆われるという奇病が報告されているが、そのような生徒が現れた場合には最初から存在しなかったことにしているというものだった。しかも、公にしたら国家機密保持法違反で拘束するというものだった。そのような強硬策が進んでいるとは信じられなかったが、憲法の非常事態条項を適用までしているという事は、政府も相当深刻に受け止めているというのは確からしい。
「それじゃあ広野。ひょっとしてお前が左遷されたのはそれが原因なのか?」
「そうだ! 隠蔽を主導している代議士の個人事務所に押しかけたからさ! でも、そいつは酷い奴だ。秘密裡にしている違法行為を全て首相におしつけて失脚させようとしているんだぞ。しかも機械生命体の拡大するのを防ぐことが出来なければ、日本だけでなく世界も・・・終わりだろうが」
そういって広野は野村から缶ビールを奪いようにして受け取ると一気に飲み干してしまった。どうやらこれから起きる事態はある程度予測しているようだった。
そしてさっき生徒に見せていた「アマノイワト作戦」の冊子を取り出して野村に見せていた。それには恐ろしい事が書かれていた。もし、機械生命体へ変貌した者が現れたら半径5Kmは封鎖する事。そして安全性が確認できるまでは全住民の移動は禁止として、変貌したものは場合によっては解剖するなど・・・
「これって、殺人だろ? いくら機械になったからといっても・・・まさか実行されているのか?」
「ああ、やっているだろうな。でも、そんなことをしても何にもならないというのに。もう少し冷静になればいいだろうが・・・もっとも、今の政権中枢にいる連中の中に明らかにレイシストがいるから、無理だろうな。そういった連中からすれば機械生命体は敵としか映らないだろうな。たとえ日本人であってもな」
そういって広野は飲み干した缶ビールの空を集めて二つ三つまとめて潰していた。




