(第013話)隠蔽された迫りくる危機.2
広野は野村を連れて薬師神の両親が経営している食堂の中でも外から見えない小さな部屋に移動してきた。そして小声で話し始めた。
「そういうこと。UNTANKの日本事務所の取材をしていた時に知ったのだけど、実は管轄内の村で人体が変異する事例が多発しているそうだ。しかも加速度的に増殖しているというのだが、知っての通り誰もグリンウェルの指示を聞かないだろ?
治安担当の中国軍将校などは部下を見捨てて帰国したそうだ。面倒な事になりたくないなんて言ってね。しかも後任など決まらないから大変な状況になっているそうだ」
それを聞いた野村はそんなのは聞いたことない話だと思った。たしかにUNTANK統治下のノース・コリアに関する情報はここ二か月はほとんど報道されていないからだ。
「それじゃあ広野はその半島の北で起きていることがここでも起きているというというのか?」
「ああ! 同じ状況は世界各地で起きているようで日本のマスメディアは一切黙殺しているけどネット上の動画投稿サイトにはアップされているぞ。もっとも日本人がみたら変なコスプレをしているしか思わねえだろうが」
そういって手帳に挟んだ一枚の写真を見せた。その写真にはボロを纏った集団が行進していたが、その顔は人間ではなかった。
「まさか、これってゾンビなのか? 政治家どもが隠そうとしているのは・・・」
「ああ、でもこいつらはゾンビじゃねえぞ。よく映画にあったように噛みついて感染させて増やすというわけではなさそうだ。一説では改造するというらしい・・・」
そういってもう一枚の写真を見せてくれた。その写真には人型ロボットが写っていた。それは女性らしい曲線をしていた。一世紀前のドイツ映画「メトロポリス」に登場したガイノイド「マリア」のようだった。
「お前ふざけるなよ。なんかの映画の一場面じゃねえんか?」
「いいや、さっきのゾンビのようなやつらの正体さ。こいつらは人間の身体を材料にして誕生する一種の機械生命体なのさ。まあ生体が金属と有機化合物に置き換わるってことさ。すでに半島の北では住民の一割が変化したそうだ」
「そんな、バカな! それって漫画の世界じゃねえんかよ。それになんでここでも起きているというんだよ!」
「それなんだが、発生するのは今のところ全て鉱山があったところだそうだ。この町にもあるだろう閉山した銅山が。それに日本各地の同様な場所でも報告されているそうだ」




